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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる16年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

パワハラが起きた時の対処

 先週、所属する社労士会の研究会で、パワハラについての話題がでました。
会員の顧問先でのことで、他の会員の意見が聞きたいということで話題となった事案で、詳細は控えますが、あらためてパワハラについて考える機会となりました。
私は、個人的には「すべての事案の回答は法令の中にある」と考えていますが、現場では法律論をふりかざすだけでは解決できない場合もあるというのは理解しているつもりです。
それでも、お客様に説明する場合には、必ず法令の根拠を示してお話します。
皆さん、熱心に聞いてくださいます。
「法律なんて難しい話はいい」などと言う方はいません。
というわけで、パワハラについてもまず根拠となる法令については何度も読み返しています。
根拠となる法律「労働施策の総合的な推進並びに労働省の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」第30条の2には、「パワーハラスメント」という文言はいっさい出てきません。
「パワハラをしてはいけない」とも書いてありません。
「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって」、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」により雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や必要な措置をしなさいと書かれています。
要するに、事業主に課されているのは、パワハラのない職場環境とするための管理措置義務なのです。

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派遣労働者を守る条文(2)

一昨日記事にした派遣法33条に関連して、補足的にもう少し書いておきたいと思います。
派遣先が派遣社員を受けい入れるためには、まず人材派遣会社と派遣契約を結ばなければなりません。
記載すべき事項は法律で決まっています。
厚生労働省でひな形も出していますが、この中に、「派遣先が派遣労働者を雇用する場合の紛争防止措置」という項目があります。
先日の記事中で、派遣労働者が派遣元との契約終了後に派遣先と雇用契約を結ぶことについて、派遣元はそれを禁じることができないという派遣法第33条の条文を記載しました。
でも、それにより紛争になる場合を考慮する措置なのでしょうか。
例として、「派遣先が派遣元に通知することとする」とあります。
まあ、それはいいとして、「派遣元が有料の職業紹介の許可を受けている場合は、職業紹介を経由して行うこととし、紹介手数料については、別途協議するものとする」とあります。
しかし、詳細についての解説をみると、派遣先が派遣元に紹介手数料を支払うのは、派遣元が職業紹介の許可を受けており、派遣先がその職業紹介により当該労働者を雇用する場合に限られます。」と記載されていて、むやみと紹介手数料をとるというような契約書は作れないと考えられます。

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派遣労働者を守る条文

 関与先からの相談で、派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)を読む機会がありました。
相談内容はいろいろ複雑なこともあり、面白い話ではありますが、関与先から相談されたことをそのままブログに書くのは控えたいので、以下一般的な事例として内容を大幅に変えてちょっと書いておきたいと思います。
派遣社員Xさんは派遣先のA社に6か月の契約で派遣されています。
業務内容は技術系の正社員の補助という内容ですが、Xさんもそれなりのスキルのある人です。
契約期間も残り1か月となり、派遣元人材派遣会社にさらに6か月の契約を更新するか否か連絡する時期がきました。
A社はXさんの働きぶりがやスキルのある人材であることを見込み、派遣契約終了後に正社員として採用したいと考えてXさんに打診したところ、XさんもA社の労働環境に好感をもっていて、派遣元との契約期間もいったん同時期に終了するので、A社に採用してほしいが、派遣元との契約で、派遣元との契約が終了後1年間は派遣先との雇用契約をすることができないことになっていると言います。
Xさんは1年間待たないとA社に入社できないのでしょうか。
いいえ、できます。

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埼玉県の最低賃金初の1000円超え

 私の地元の埼玉県の地方最低賃金審議会は、最低賃金を41円アップして987円から1028円にするように答申を出しました。埼玉県の最低賃金は初めて時給1000円を超えることになりそうです。
東京都は1113円、神奈川県は1112円、千葉県は1026円と、首都圏は軒並み1000円を超えることとなりました。
2019年度(令和元年度)に全国で初めて東京都と神奈川県が1000円を超え、昨年度は大阪府も1000円超えとなり、今年は愛知県も1000円を超える見込みです。
支払う方の事業主さんは大変かもしれませんが、私が社労士になった2006年度は埼玉県が687円、東京都でさえ719円でしたから、せめて1000円はないと生活するのも厳しいのではないかと考えていました。
1000円までくるのに随分時間がかかったんだなーと思います。
それだけ、物価や賃金そのものが上がらなかった時代が長く続いたということなのでしょうか。
最低賃金については、全国一律にした方がよいという意見もあります。
物価や家賃など生活費を考慮して地域ごとに決めているらしいのですが、地方と都市部との賃金の差により地方から人材が都市に流出して、地方がさびれてしまうとする考え方です。

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昇給の遡及支払 退職者はどうする?

 私は、お客様との顧問契約では、「労務管理等に関するコンサルタント」として契約を締結します。
契約書に業務内容などを記載していますが、お客様から様々な労務管理に関するご相談を受け、労働・社会保険諸法令に基づき適切な助言、指導を申し上げ、時には最新の知識と情報をご提供するというようなことが主たる業務となります。
お客様によって、電話でのご相談が多い場合もあれば、メールで要点をしっかり書いてくださる方もいらっしゃいます。
私も、必要に応じてメール、電話等で対応しますが、どちらかというと記録として残るようにメールを使うことが多いです。
複雑な内容の場合は別途添付文書で説明することもあり、また、必要な社内文書を作成してお送りする場合もありますからメールを使うことが多いです。
先日も、本日の表題のような件について電話をいただいた後に、詳細についてメールに記載してお送りいただきました。
お客様とのやりとりについて書くことは控えますが、以下、一般論として書いておきます。

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不利益変更も年数がたつと不問に?

先日、ある出版社が開催したオンラインセミナーを受講しました。
3月に出た未払い残業代関係の最高裁判決に対する解説ということで、興味深い内容でした。
有料セミナーですし、開催後間もないので当ブログで内容を書くことは控えますが、直接のテーマとはちょっと違うところで、講師の弁護士先生があくまでも私見とおっしゃっていたことで面白いと感じたことがありました。
労働条件の不利益変更について、異議を唱える場合、変更から2~3年たっていると裁判の場では不利益変更が許容されるのではないかということを感じさせるような判例があるそうです。。

労働契約法により、労働条件は合理的内容の就業規則がありそれを周知していれば就業規則の内容とすることができます。ただし、就業規則より良い条件で個別に契約することは可能です。
悪い条件とすることはできません。個別に悪い条件としてもその部分は無効となり就業規則に従うことになります。
問題となるのは、経営状況などの事情により就業規則の労働条件を労働者にとって不利益な変更とする場合です。
例えば、退職金が払えそうもないから減額するように制度変更するとか、最近ですと家族手当、特に配偶者手当をなくすとか、賃金制度そのものの制度設計の変更を行い、良くなる人もいるが悪くなる人もいるというような場合です。

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有給休暇取得は権利とは言っても

先週のWBCの決勝戦は平日でしたが、テレビのインタビューに答えて、「有給休暇とらせていただきましたー。明日から一生懸命働きますから、勘弁してくださーい」と言っていた方がいて、くすっと笑ってしまいました。
しかし、有給休暇は、要件にかなえば本来労働者に付与された権利であり、何に利用しようといつ取得しようと労働者が自由に決められるのが原則です。
使用者側としては、「事業の正常な運営を妨げる場合」には、他の日に付与することができると労働基準法で規定されています。

「事業の正常な運営を妨げる場合」とはどういう場合かは、必ずしも明確ではありません。
しかし、労働者が請求した日に付与するのが原則ですから、単に繁忙期だからとか、恒常的に人員不足だからというような理由は認められないと考えられています。
使用者としては、労働者がいつ有給休暇を請求してもいいように、ある程度の準備はしておくべきだからです。
会社の規模や事業内容、労働者の業務内容、代替者の配置の難易度など個別に判断するということになりますが、法律論だけを振りかざすのではなく、労使で話し合い折り合いをつけるという場合もあるかもしれません。
折しも、JR東海の新幹線の運転士が有給休暇を自由に取れないことに対する損害賠償訴訟があり、東京地裁で労働者側の言い分が認められたというニュースがありました。

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10月から最低賃金が改正

 10月1日から全国の地域別最低賃金が改正されています。
全国平均で961円、昨年より31円のアップです。
私の地元の埼玉県は987円、平均と同じ31円のアップです。全国で一番高い東京都は1072円でやはり31円のアップです。いずれも時給の額です。
そもそも最低賃金とは? というところをちょっとおさらいしておきますと、最低賃金法という法律により定められています。
その法律の目的は第1条にあり、「賃金の低廉な労働者について賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り・・・」とあり、弱い立場の労働者の賃金が下がり過ぎないように歯止めをかけているんだねということがわかります。
使用者は必ず最低賃金以上の賃金を支払う義務があり、最低賃金額未満の賃金で労働契約を締結した場合、その部分は無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされます。
ですから、もし最低賃金に達していない契約になっていた場合は、契約締結日にさかのぼり賃金額を
最低賃金額に引き上げて差額を請求することができます(時効は当面3年)。
各都道府県労働局に最低賃金審議会が置かれ、毎年、調査審議の上決められます。


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