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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる16年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

定年後再雇用の適切な基本給とは?

 「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」により、現在60歳未満の定年は禁じられていて、なおかつ、65歳未満の定年を定めている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するために、1.定年年齢の引上げ、2.継続雇用制度、3.定年制の廃止のいずれかの措置をとることが義務づけられています。
というわけで、多くの企業で法律に適応する措置がとられています。
私のつたない経験の印象ですが、定年に達したときにいったん定年退職として退職金を支払い、その後再雇用の契約をする会社が多いように思います。
社内の従業員の区分も正社員ではなく嘱託などと称して、6か月とか1年などの有期契約として賃金も別体系となり正社員時代よりかなり低額になるというのが一般的です。
役職から外れてもほとんど正社員時代と変わらない業務内容の場合に、この低額になった賃金について、労働契約法20条(現在は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」8条に移行)の「有期雇用者に対する不合理な待遇差別の禁止」の原則に照らしてどうなのかということに対して最高裁判決がでたのが、長澤運輸事件(平30.6.1)でした。
運送会社のドライバーという正社員と業務内容にほぼ差がない再雇用の社員についてですが、この判決で、最高裁は、当時の労働契約法20条の条文中にある「その他の事情」があるから、定年後の再雇用の賃金についての減額も精勤手当以外の手当(住宅手当、家族手当、役付手当、賞与)の不支給も違法ではないとしました。

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育休中の社会保険料の免除の改正

 10月1日からの育児・介護休業法の改正に合わせて育児休業中の社会保険料の免除要件も改正となりました(10月1日以降に開始した休業に適用)。
3歳に満たない子を養育するための育児休業中の社会保険料について、事業主の申出により事業主と被保険者分の両方とも負担が免除される制度です。
負担が0となりますが、休業前の標準報酬月額により算定した保険料を支払ったものとみなされ、将来の年金額が減るような影響は受けません。
労使ともにありがたい制度だと思いますが、事業主の申出が必要ですので原則として休業期間中に申出書を提出しますが、10月1日以降同じ月内で2回の分割取得をすることも可能となりましたので、育児休業の終了日から起算して暦月で1か月以内までに提出すれば受け付けられることとなりました。
改正点ですが、今までは「育児休業を開始した月からその休業が終了する日の翌日が属する月の前月まで」が免除期間でした。
これでいくと、極端な話、当月の月末1日だけ育児休業をしたとしても当月の保険料が免除になり、月末を含まないで当月に25日間休業しても免除されないというちょっと不公平な制度となっていました。賞与についても同じ考え方でしたが、今般賞与についも見直されました。

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過酷な労働環境も労災の原因となる

 今日の朝日新聞の朝刊に、2015年に38歳で急性心不全で死亡した男性の労災不認定について、昨年改正された新基準による見直しが行われてあらためて労災と認定されたと報道されていました。
男性は、トラックやバスを製造販売する会社で自動車整備を担当していましたが、2015年7月、勤務中体調不良を訴えて入院して、その日のうちに亡くなりました。
亡くなる前2か月の時間外労働が平均77時間だったことから、遺族の労災申請は退けられてしまいましたが、19年に決定の取り消しを求めて国を提訴していました。
おりしも昨年、脳・心臓疾患を発症した場合の認定基準が20年ぶりに見直され、労働時間だけではなく、それ以外の負荷要因も加味して総合的に判断することが明確化され、また、対象疾病に重篤な心不全が追加されました(
参照
)。
この新基準により、管轄労働基準監督署があらためて検討して労災を認定し、遺族は提訴を取り消したことを担当弁護士が明らかにしたというニュースです。
男性は空調設備のない場所で高温のスチームによる洗浄作業などしていて、著しい疲労の蓄積があったことが負荷要因になると認めたようです。

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給与体系の変更と不利益変更

 労働契約は労働者が労務を提供して使用者がその対価を支払う契約で、双方の合意により成立します。合理的な内容(法令違反がなく公序良俗違反もない)の就業規則があり、それを労働者に周知している場合は、労働条件はその就業規則の内容となります(労働契約法第7条)。
労働条件は労使の合意により変更することができますが、使用者側が一方的に就業規則を改正して労働条件を悪くすることは原則としてできません。「不利益変更」などと呼びます。
この就業規則による不利益変更については、最高裁判例などから原則として許されないが、合理性があれば許容されるとされています。
労働契約法では、最高裁判例を受けて、変更後の規則の相当性、労働者が受ける不利益の程度や変更する必要性、労使の協議の状況、その他の事情などに照らして合理的であれば認められるとしています(第10条)。

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オンライン研修花盛り

コロナ禍になり変化したことのうち、私の中で一番は各種セミナーや研修が事務所にいながらにして視聴できるオンライン形式になったことです。
出版社などで行うセミナーはほぼ100%といってもいいぐらいオンラインです。所属する社労士会でも法改正その他の情報等について任意参加の研修会が行われますが、これも今ではzoom利用です。ネット環境の悪い会員に対する配慮か若干名の会場参加は認めらますが、基本的にオンライン参加です。
今まで、会場までいってたのは何だったのだろうと思うぐらいです。
特に、出版社が行う有料のセミナーは、都心で行われることが多く電車や地下鉄を乗り継いで行ってましたから、かなり時間と交通費の節約になります。
でも、いいことばかりではなく、メールで送られてきた資料を必要と思う場合は自分で印刷しないといけないことです。
四分割ぐらいで印刷しても数十ページになることもあり、やれやれと思います。
なるべく電子データでと思っていますが、昭和生まれの性か、必要なときにさっと見るために必要最低限にとどめてはいますが、つい印刷してしまいます。
それでも、様々なセミナーに以前よりずっと気軽に参加できるようになったことは私にとってはコロナ禍における「僥倖」となりました。
最近は、嘆いていても仕方ないので、このようなラッキーなことってあるかなーと考えるようになりました。
今のところ、他にはなかなか見つからないのですが。
嫌なニュースが多いせいか、身の周りの半径2.3メートルの幸せを探すようになりました。
世の中全体を広く見て様々な人の様々な立場や意見に思いを致すというところから外れるようでちょっぴり残念なのですが。そんなことも必要なときはありますね。



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マイカー通勤容認のリスク

 都内ではあまりないかもしれませんが、地方ではマイカー通勤が当たり前に行われていると思います。私の地元の埼玉県南部は東京に通勤、通学している「埼玉都民」と言われる人が多いのですが、私が今まで就業規則を作った県内の企業では、意外とマイカー通勤を認めている会社が結構ありました。
私はそのたびに後述するマイカー通勤容認のリスクをご説明して、マイカー通勤に関する規定を作っていただいてきました。
コロナ禍で電車通勤を避けて新たにマイカー通勤を奨励することになった関与先などもあり、労務管理に気をつけていただきたいと思っています。
マイカー通勤の場合の申請の仕方、許可基準(公共交通機関よりマイカー通勤の方がはるかに効率がいいなど、任意保険の加入、違反歴など)、通勤手当の支給の仕方、駐車場をどうするか、不適格と認めた場合の措置など、決めておくべきことはたくさんあります。

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退勤後のメールは業務時間と認定

 報道によると、2015年に致死性不整脈で亡くなり過労死として労災認定されていた男性の遺族が起こした損害賠償請求裁判で、退勤後のメールやファイル更新も業務と認められたそうです。
亡くなる直近2~6か月の平均時間外労働(1日8時間1週40時間の法定時間を超える時間)が80時間を超えていたとして、2017年8月に労災認定されましたが、遺族側は、退勤後のメール等でもっと時間外労働をしていたとして、2018年8月に7200万円の損害賠償訴訟を提起したとあります。
東京地裁は、退勤後でもメールの送信やパソコンのファイル更新の時刻が確認できれば業務時間とすると遺族側の主張を認め、月平均10時間前後上乗せして時間外労働時間として、1100万円の損害賠償を認めたとあります。
会社側は判決内容を確認していないためコメントできないとしていますが、裁判では、会社を退勤後のメールやリモート作業は業務時間に当たらないと主張していたようです。

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頂点同調主義の国?

 今月、経済評論家の内橋克人氏が亡くなり、NHKテレビで放送した追悼番組を録画していたのですが、遅ればせながら昨日観ました。
以前、著書を読んだこともありますし、メディアでも盛んに発言していらっしゃいましたが、私は共感するところが多かったので、亡くなられたのは大変残念に思いました。
内橋氏は、2000年代の初頭の派遣法改正により製造業にまで派遣が拡大したことで、非正規雇用者が増え貧困層が出現すること、早くからワーキングプアの問題に言及していたことなど、その慧眼には敬服します。
番組の最後で、メッセージとして語っていた「頂点同調主義」という言葉が印象に残りました。
権力にもの言うことができず、反対の気持ちがあっても結局何も言えずに従ってしまうことらしいのですが、この国の人たちのそういう体質が戦争に突っ走り、戦後も何も変わっていないと語っていらっしゃいました。


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