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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる15年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

過酷な労働環境も労災の原因となる

 今日の朝日新聞の朝刊に、2015年に38歳で急性心不全で死亡した男性の労災不認定について、昨年改正された新基準による見直しが行われてあらためて労災と認定されたと報道されていました。
男性は、トラックやバスを製造販売する会社で自動車整備を担当していましたが、2015年7月、勤務中体調不良を訴えて入院して、その日のうちに亡くなりました。
亡くなる前2か月の時間外労働が平均77時間だったことから、遺族の労災申請は退けられてしまいましたが、19年に決定の取り消しを求めて国を提訴していました。
おりしも昨年、脳・心臓疾患を発症した場合の認定基準が20年ぶりに見直され、労働時間だけではなく、それ以外の負荷要因も加味して総合的に判断することが明確化され、また、対象疾病に重篤な心不全が追加されました(
参照
)。
この新基準により、管轄労働基準監督署があらためて検討して労災を認定し、遺族は提訴を取り消したことを担当弁護士が明らかにしたというニュースです。
男性は空調設備のない場所で高温のスチームによる洗浄作業などしていて、著しい疲労の蓄積があったことが負荷要因になると認めたようです。

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給与体系の変更と不利益変更

 労働契約は労働者が労務を提供して使用者がその対価を支払う契約で、双方の合意により成立します。合理的な内容(法令違反がなく公序良俗違反もない)の就業規則があり、それを労働者に周知している場合は、労働条件はその就業規則の内容となります(労働契約法第7条)。
労働条件は労使の合意により変更することができますが、使用者側が一方的に就業規則を改正して労働条件を悪くすることは原則としてできません。「不利益変更」などと呼びます。
この就業規則による不利益変更については、最高裁判例などから原則として許されないが、合理性があれば許容されるとされています。
労働契約法では、最高裁判例を受けて、変更後の規則の相当性、労働者が受ける不利益の程度や変更する必要性、労使の協議の状況、その他の事情などに照らして合理的であれば認められるとしています(第10条)。

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オンライン研修花盛り

コロナ禍になり変化したことのうち、私の中で一番は各種セミナーや研修が事務所にいながらにして視聴できるオンライン形式になったことです。
出版社などで行うセミナーはほぼ100%といってもいいぐらいオンラインです。所属する社労士会でも法改正その他の情報等について任意参加の研修会が行われますが、これも今ではzoom利用です。ネット環境の悪い会員に対する配慮か若干名の会場参加は認めらますが、基本的にオンライン参加です。
今まで、会場までいってたのは何だったのだろうと思うぐらいです。
特に、出版社が行う有料のセミナーは、都心で行われることが多く電車や地下鉄を乗り継いで行ってましたから、かなり時間と交通費の節約になります。
でも、いいことばかりではなく、メールで送られてきた資料を必要と思う場合は自分で印刷しないといけないことです。
四分割ぐらいで印刷しても数十ページになることもあり、やれやれと思います。
なるべく電子データでと思っていますが、昭和生まれの性か、必要なときにさっと見るために必要最低限にとどめてはいますが、つい印刷してしまいます。
それでも、様々なセミナーに以前よりずっと気軽に参加できるようになったことは私にとってはコロナ禍における「僥倖」となりました。
最近は、嘆いていても仕方ないので、このようなラッキーなことってあるかなーと考えるようになりました。
今のところ、他にはなかなか見つからないのですが。
嫌なニュースが多いせいか、身の周りの半径2.3メートルの幸せを探すようになりました。
世の中全体を広く見て様々な人の様々な立場や意見に思いを致すというところから外れるようでちょっぴり残念なのですが。そんなことも必要なときはありますね。



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マイカー通勤容認のリスク

 都内ではあまりないかもしれませんが、地方ではマイカー通勤が当たり前に行われていると思います。私の地元の埼玉県南部は東京に通勤、通学している「埼玉都民」と言われる人が多いのですが、私が今まで就業規則を作った県内の企業では、意外とマイカー通勤を認めている会社が結構ありました。
私はそのたびに後述するマイカー通勤容認のリスクをご説明して、マイカー通勤に関する規定を作っていただいてきました。
コロナ禍で電車通勤を避けて新たにマイカー通勤を奨励することになった関与先などもあり、労務管理に気をつけていただきたいと思っています。
マイカー通勤の場合の申請の仕方、許可基準(公共交通機関よりマイカー通勤の方がはるかに効率がいいなど、任意保険の加入、違反歴など)、通勤手当の支給の仕方、駐車場をどうするか、不適格と認めた場合の措置など、決めておくべきことはたくさんあります。

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退勤後のメールは業務時間と認定

 報道によると、2015年に致死性不整脈で亡くなり過労死として労災認定されていた男性の遺族が起こした損害賠償請求裁判で、退勤後のメールやファイル更新も業務と認められたそうです。
亡くなる直近2~6か月の平均時間外労働(1日8時間1週40時間の法定時間を超える時間)が80時間を超えていたとして、2017年8月に労災認定されましたが、遺族側は、退勤後のメール等でもっと時間外労働をしていたとして、2018年8月に7200万円の損害賠償訴訟を提起したとあります。
東京地裁は、退勤後でもメールの送信やパソコンのファイル更新の時刻が確認できれば業務時間とすると遺族側の主張を認め、月平均10時間前後上乗せして時間外労働時間として、1100万円の損害賠償を認めたとあります。
会社側は判決内容を確認していないためコメントできないとしていますが、裁判では、会社を退勤後のメールやリモート作業は業務時間に当たらないと主張していたようです。

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頂点同調主義の国?

 今月、経済評論家の内橋克人氏が亡くなり、NHKテレビで放送した追悼番組を録画していたのですが、遅ればせながら昨日観ました。
以前、著書を読んだこともありますし、メディアでも盛んに発言していらっしゃいましたが、私は共感するところが多かったので、亡くなられたのは大変残念に思いました。
内橋氏は、2000年代の初頭の派遣法改正により製造業にまで派遣が拡大したことで、非正規雇用者が増え貧困層が出現すること、早くからワーキングプアの問題に言及していたことなど、その慧眼には敬服します。
番組の最後で、メッセージとして語っていた「頂点同調主義」という言葉が印象に残りました。
権力にもの言うことができず、反対の気持ちがあっても結局何も言えずに従ってしまうことらしいのですが、この国の人たちのそういう体質が戦争に突っ走り、戦後も何も変わっていないと語っていらっしゃいました。


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実態がなければ「夫婦」ではない(2)

昨日の記事の続きです。企業で退職金規程を作るときに死亡したときの受取人を就業規則等で定めておけば、法定相続人よりそちらが優先されるという最高裁判例があり(最判昭和55.11.27退職金請求事件) 、その考え方で現在定着しています。
ですから、例えば民法上相続人とはなっていない事実婚にある配偶者も、社内規定で事実婚も含むとしておけば労働者が死亡したときに退職金を受け取れることになります。
問題となるのは、重婚的内縁関係の場合です。法律上の配偶者がいながら、事実上の婚姻関係になった「配偶者」がいる場合ですが、これも裁判になった場合などは昨日の形骸化した夫婦関係は事実上の離婚状態とする考え方が最近は定説となっているようですから、そこでカバーされる可能性が高くなりますが、裁判では個別の様々な事情を斟酌して判断しています。法律婚の夫婦関係が破綻してから一定期間たち、もう修復の見込みがないと思われる場合など、事実婚のハートナーが「配偶者」として認められる可能性が高くなります。
しかし、企業ではそこまでフライバシーに踏み込めるかというと、なかなか難しいとも思われ、死亡したときに退職金を誰に支払うか迷うという事例がまれだとは思いますが、発生する可能性が考えられます。
そこで、昨日、所属する研究会の会員が教えてくれたある弁護士さんは、「法定相続人が法定相続分の割合でそれぞれ固有財産として取得する」という規定を提案していました。
事実婚の人が受け取れなくなるけれど、それは生命保険の受取人とか生前贈与などの方法で補完措置が可能になるとしています。
私見では、この案には賛同できません。

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実態がなければ「夫婦」ではない

 会社に勤めていた人が在職中に死亡する場合があります。
その場合は、死亡した日をもって退職扱いとなり従業員としての身分を失います。会社としては、当然社会保険や雇用保険等の資格喪失届を行うなどの手続をします。
その会社に退職金制度があり、要件にかなっていれば通常の退職と同様に退職金も支払います。
本人が亡くなっていますから、会社の規定で決められている遺族、特に規定がなければ法定相続人(相続については民法で決められている)に支払うことになります。
ただし、中小企業退職金共済や企業年金などに加入している場合、それぞれの機関の規定に従うことになります。特に前者の場合は中小企業退職金共済法という国の法律があり、そこに受け取るべき遺族の優先順位が規定されています。
この件について、所属する社労士会の自主研究会でいろいろ議論があり、会員の一人がごく最近の最高裁判例についての弁護士さんの見解などについて教えてくれました。
その判例に興味が湧いたので最高裁の該当サイトで判決文を読んでみました。以下、書いてみようと思います(最判令和3.3.25 退職金等請求事件)

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