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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

人事考課が不当だと感じた時

私が今まで就業規則の作成や見直しを経験した企業は中小企業ばかりで、中でも人数の多いある会社だけは賃金制度について細かい等級表がありましたが、他は大まかな表だったり、そういうものはなく個別に基本給を定めることになっていたりしました。

賃金の決定の仕方は就業規則に必ず記載しなければならない事項ですから、そういう場合には、「基本給は年齢、経験、能力、適性等を考慮して各人ごとに定める」としておけば、法律上は問題がありません。

事業主の裁量部分が大きいというイメージです。

この裁量の範囲はどの程度認められるのでしょうか。もし明らかに不当な評価がされた場合に、それは違法とすることができるのでしょうか。

合理性を欠く恣意的な判断で不当に評価され、結果、本来得ることができたであろう賃金や退職金を得ることができなかったことについて損害だと考えれば、不法行為責任があると考えることもできます。

現実に裁判の場で認められるでしょうか。

いくつか裁判例がありますが、使用者側の裁量権の濫用を認めるまではなかなかいかないようです。

「公平無私な評価をすべきは当然であり、いやしくも与えられた裁量権を濫用し、個人的な恨みを晴らしたり、職務と無関係な事項につき自分の意に沿わぬ行動をとったことに対して報復するなど不当な目的をもって、不当に低い考課や査定をし、あるいは配置換えにつき不利益な意見を具申することは許されず、かかる行為をした結果、部下に経済的損害ないし精神的苦痛を与えた場合には、違法な法益侵害として不法行為責任を負うものと解すべきである」

としながらも、

「その裁量権を濫用したとまで断定するには、なお、躊躇を感ぜざるをえず、他にこの点につき確信を得るに足りるだけの証拠もない」として、結局は裁量権の濫用を認めていない(ダイエー事件横浜地裁判平成2.5.29)、

 

「人事考課をするに当たり、評価の前提となった事実について誤認があったとか、動機において不当なものがあったとか、重要視すべき事項を殊更に無視し、それほど重要でもない事項を強調する等により、評価が合理性を欠き、社会通念上著しく妥当を欠くと認められない限り、これを違法とすることはできない」(光洋精工事件大阪高裁判平成9.11.25)

などの裁判例があり、労働者側はかなり分が悪くなっています。

 

結局、人事考課をする上で考課者の主観を排除することはできないわけですから、裁量権を認めざるを得ず、明らかに不当だといえる場合以外はなかなか文句を言えないということになります。しかし、最初の例にあるように、使用者は裁量の枠内で公正公平に人事考課を行う義務はあると考えられますから、

査定制度とその運用に対する合理性や業績、能力などからみて適切か、他の同レベルとの社員とのバランスなどから、相当性が評価されるものと思われます。

使用者としては、人事考課についての基準など求められたらある程度は合理的な説明ができるようにしておく必要はあるものと思います。

〔今日の参考文献〕別冊ジュリスト№134(有斐閣) p78~79 井上克樹「事例にみる賃金トラブル」(新日本法規)P190~192

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