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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

使用者から労働者への損害賠償請求

労働基準法では、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしてはならないという規定があります。

過去記事に詳しく書きましたが、(参照)これは、労働者が違約金や賠償金を支払わされることを恐れて事実上退職の自由を奪われ、強制的に働かされることにつながるからです。

しかし、この規定は労働者側に責任があることで会社が現実に損害を被った場合の賠償請求までしてはいけないと言っているわけではありません。

例えば、労働者の不注意による事故により会社が損害を被った場合、会社はどの程度の要求をできるのでしょうか。

過去記事では研修費用を会社が立て替えた事例などをご紹介しましたが、今月の自主研究会の例会で同内容の原稿を書いていらした会員がいて、最後の方で賠償額は4分の1が限度とはっきり書いていたので、その根拠をお尋ねしました。

彼は多分何かの本から引用したらしく、また原稿もまだ細かく推敲していないということもあり、根拠がよくわかりませんでした。

先日、別件を調べていたら偶然その判例(茨城石炭商事事件最高裁判昭和51.7.8)を見つけたので、ちょっとご紹介したいと思います。

石油やプロパンガス等の輸送・販売業の会社が仕事でタンクローリーを運転していた社員が起した追突事故について、社員に損害賠償を請求した裁判ですが、この会社は経費節減のために任意保険について対人賠償保険のみ加入して、対物賠償責任保険と、車輌保険には加入していませんでした。

そのため、会社が被害者に支払った賠償金について労働者側に請求したものですが、裁判では、この運転者は普段は小型貨物自動車の担当で、臨時的に会社の特命でタンクローリーを運転したこと、その勤務成績は普通以上であり、そもそも多数の車輌を保有しながらきちんと任意保険に加入しない使用者側もおかしいということで、「信義側上4分の1を限度として請求しうるにすぎない」と判断されたものです。

 

私の個人的感想としては、4分の1の賠償も要求するのはちょっとどうなのかなと思いますが、追突事故を起した責任ということなのでしょうか。

会社が任意保険に入らないというのは非常に問題がありますよね。ちゃんと保険に入っていれば労働者側に請求する必要もなかったわけですから。

私が、今作成中のある法人はマイカー通勤を認めているのですが、今まであまりそのリスクについて考えていなくて、社内規程もなかったので、マイカー通勤に関する規定をかなりきちんと作りました。本当は別規程にするとよいのですが、マイカー通勤は常時1人か2人ということなので、本則上に、対人無制限、対物500万円以上の任意保険に加入することを条件とするなどしました。

そんなことを考えると、もし会社がきちんとした任意保険に加入していない場合、労働者としては業務上の運転をすることを拒否できるのだろうかとか、ちょっと考えてしまいます。

労使関係とは契約関係ですから、契約する時に業務上運転する必要がある場合には任意保険に加入している車輌しか運転しないという契約はできるとは思いますが、そんな話は労働者側からはできないでしょうし、したらしたで、うるさそうな人というレッテルを貼られ、不採用にされるかもしれません。

労働基準法第2条にある「労働条件は、労働者と使用者が対等の立場において決定すべきもの」というのは、つくづく実現が難しいことなんだなあと考えてしまいました。

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