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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

定年制度についてアレコレ考える

今作成中のある会社の社内規程がらみで、最近、定年制についてはたと考えることがあり、定年制度そのものについてあれこれ考え勉強しました。

まず、定年というのは、ある一定の年齢になったら自動的に会社を辞めていただく(現在60歳未満の定年は違法です)というもので、それについて特に疑問を感じませんでした。

しかしよく考えてみると、個人差も考慮せず一律にある年齢で線引きをしてしまうのは、果たして正しいことなのだろうかという疑問も湧いてきます。

調べてみると、やはり「定年というのは年齢を理由とする不合理な差別であり、高年齢者に失業を強制するものであり、憲法27条にある国民の勤労する権利の保障に反し、同法14条の法の下の平等に違反し、民法90条の公序良俗違反である」(注1.)という説があるのですね。

もちろん対する反論もあります。

〔注1.〕憲法第27条第1項 すべて国民は勤労の権利を有し、義務を負う。

    憲法第14条第1こう すべて国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的、又は社会的関係において差別されない。

    民法第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。 

労働者も一定の年齢になれば肉体的・精神的な機能が衰える、にもかかわらず年功序列型の賃金制度のもとでは、高年齢者ほど賃金が高くなるため、一定年齢で線引きしなければ企業にとって不当な出費を強いられることになる。

また、高齢者はそれなりに高いポストを占めているため、若い労働者の昇格、昇進が不当に妨げられることになり、企業の合理的経営という見地からは人事の刷新を図るための必要な制度だとするものです。

さらに、定年制というのは、終身雇用、年功序列型賃金、退職金制度と密接に結びつきつつ確立されてきたもので、定年だけを取り出して違法とすることはできないという反論です。

現在では、どちらかというと後者の意見が大勢を占めるのではないでしょうか。

公務員についての定年について争われた裁判でも、概ね定年制を適法としています。

 

民間企業の裁判例では、「就業規則の法的規範性」について言及した有名な裁判で秋北バス事件というのがあるのですが、(最判昭43.12.25)この中で定年制についても言及していて、

「およそ定年制は、一般的に老年労働者にあっては当該業種又は職種に要求される労働の適格性が逓減するにもかかわらず、給与が却って逓増するところから、人事の刷新・経営の改善等、企業の組織および運営の適正化のために行われるものであって、一般的にいって、不合理な制度ということはできない」としています。

さて、一般職種と役職者と定年年齢に差をつけて、役職者の定年年齢を高くすることはどうでしょうか。実は、私があれこれ悩んだのはこの問題なのですが、現在高年齢者雇用安定法で、希望する労働者については、原則として65歳までの(平成25年3月31日までは64歳まででもよい)雇用が義務づけられています。

定年は60歳でもよいのですが、その後継続して雇用するか再雇用するかしなくてはなりません。雇用形態は正社員ではなく、嘱託、パートなどでも構いません。

どうしても選別したい場合には、具体的かつ客観的な基準を労使協定で定めることになっています。ということで、厚生労働省のHPにも関連のQ&A(参照)などか掲載されていて解説されていますが、定年年齢を同じ社内で別個にすることについては何も書いていません。

 

そうしたら、燈台もと暗しで、前述の秋北バス事件で、一般職種50歳定年、主任以上55歳定年を合理的としていたのです。

その他にも、本社採用者60歳、支店採用者55歳も「採用方法、職務内容、人事異動、給与体系等が異なるとして、年齢差は公序に反するとは認められない」(名古屋地裁判平2.7.10フジタ工業事件)などがあり、一つの会社内で必ずしも全員一律同年齢の定年ではなく、差をつけることに合理性があれば認められるということがわかりました。

私が現在考えている社内規程は、もう少し複雑で会社法もからんでくることなのですが、このような根拠となる判例などがはっきりすれば、私の考えとぴったりはまるので、「よし! これでいけるぞ!」と、数学の難しい問題を解いた時のような気分(随分大昔の話ですが・・・)になりました。

春爛漫、仕事をしていると壁に当たる時もありますが、一歩づつ乗り越えていくのはうれしいものです。

〔今日の参考文献〕河本毅 「労働紛争解決実務講義」第二版P754~792

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