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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

配置転換についての法的解釈補足

昨日の記事「降格、配転、法的解釈はどうなってる?」についてご質問をいただきました。


「使用者の裁量を認めつつ実態が問われるのですよね」というようなご質問ですが、(昨日のコメント欄をご覧ください)少し補足させていただきたいと思います。

配転とは、「従業員の配置であって職務内容又は勤務場所が相当長期間にわたり変更されるもの」をいいます。(菅野和夫 労働法第6版)


判例でも使用者の人事権として裁量を認めているわけですが、その根拠については


①包括的合意説 労働契約は配転を含めて包括的に使用者に権利を委ねるものであるので、個別の決定は権利の濫用にならなければ使用者が一方的に意思表示できる。


②労働契約説 配転命令は労働契約において合意された範囲内のみ効力を有する。範囲を超える場合は労働者の明示、ないし黙示の合意が必要である。


③特約説 特約がある場合のみ使用者が配転を命じることができる


以上の学説があり、通常①と②が有力です。①、②ともに就業規則等に規定があればあまり差がないわけですが、就業規則など社内的に規定がない場合、①説なら労働契約をした時点で包括的に使用者に権利が発生すると考えますから問題ないのですが、②説をとると、社内的な規定がなく労働者が合意しない場合、使用者側が権利の濫用ではないということを示さなければならないのです。


ですから、使用者側にすれば就業規則というのはとても重要な意味を持つわけですね。


昨日判例として挙げた「東亜ペイント事件」では一審、二審では転勤を命じられた社員Xについて、どうしてもXでなくてはいけないという理由もなく、Xが相当な犠牲を強いられることを認め、かつ前の転勤から短期間しかたっていないという事情を考慮して権利の濫用と判断されました。


それに対して最高裁が昨日記事にした判断基準を示すとともに、本件については権利の濫用にはあたらないとしました。使用者側の人事権を大きく認めたものと思われます。昨日も触れましたが、私見では、育児介護休業法ができて、社員の配置に考慮する義務が使用者に課せられましたから(第26条)今後使用者側にもう少し厳しくなるのではないかと思います。


労働組合活動に関連しての配転や(不当労働行為)、差別的取り扱いに当たるような配転は(均等待遇法違反)それぞれの法律に照らして無効になると考えられています。


ですから、ご質問いただいたしろたぬきさんのおっしゃるとおり「使用者の裁量を認めつつ実態で判断する」というような解釈でよいと思います。ただ、これらはあくまでも法律的な解釈ということです。現実には労働者側はなかなか文句は言えないだろうし、「俺が法律だ」なんて使用者もいるでしょうし。


でも、こういう考え方があるのだと知っておけば、自分の実態がどの程度のものなのか、冷静に判断できると思います。「知るということは選択肢を広げること」私はそう思っています。


今日の参考文献   別冊ジュリスト労働判例百選平成7年10月10日(ちょっと古くてすみません)66ページ   労働事件審理ノート 判例タイムズ社 2006年6月23日61~66ページ



 


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コメント


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勉強になりました^^

おはようございます。
補足説明読ませていただきました、勉強になります。
鈴木さんのブログを読ませていただくようになってから法律ってすごく奥深いものなんだと感じています(なんとなく気づいていましたが、今までの勉強はあくまで試験勉強だったんですね)。
それから、就業規則ってとても重要ですね!労使間のトラブルを防ぐためにも就業規則の作成などがしっかりできるように勉強しないといけないなと思いました。

しろたぬき | URL | 2006年12月21日(Thu)07:46 [EDIT]


しろたぬきさん
おはようございます。

私のブログを読んでいただいて、何かを感じたり考えたりしていただけるのはとてもうれしいことです。
これからもよろしくお願い致します。

おばさん社労士 | URL | 2006年12月21日(Thu)10:48 [EDIT]