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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

琴光喜関解雇を考える

企業が何か不祥事を起こして、社長や関係者など背広姿の男性が2~3人でそろって頭を下げる姿はすっかり珍しくなくなりましたが、昨日は、2~3人どころかざっと10人以上の大柄な男性が前列に居並び、後列には着物姿の力士たちがたくさん並んで、一斉に頭を下げる姿は、さすがにちょっと異様な光景に見えました。
野球賭博をはじめとしてそれ以外の花札など賭け事をした人たちも名前が公表され、横綱まで謝罪していました。
常習的にやっていたとされる大嶽親方と大関琴光喜関は最も重い解雇処分となり、大嶽親方には退職金も支払われないとのことです。
この問題の本質は賭博という行為よりそれにより暴力団に資金を提供して、結果的に反社会的組織に利益を与えてしまうということだと思いますが、そのあたりのことは一切語られず、これで幕引きなのかなとちょっと違和感があります。
私は、相撲にはほとんど興味がありませんが、社労士としては「琴光喜関の解雇は正当か」というところに興味があります。

そもそも、大相撲の力士が「労働者」になるかどうかはどう判断されているのかわかりませんが、相撲協会から給料をもらっているようですから、その点では労働者性があるかなと思います。
解雇が正当か否かを考える時には解雇する側が解雇する権利を濫用していないかをみるわけですが、法律的な規制としては、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)があり、これは、過去の裁判例などから確立した考え方です。
解雇する場合には、まず客観的合理的理由が必要であり、また、それだけでは足りず、社会的相当性が必要とされるというものです。
客観的合理的理由としては、普通は、就業規則に定められた解雇事由に該当するかが問われます。解雇される労働者がいつ、どこで、どのような行為をして、それが就業規則のどの条項に当てはまるのか。
もちろん、就業規則にそういう条項があることを本人に周知する手続きがとられていたかも就業規則の効力という点で問題となります。
それらをクリアーしていたとしても、社会的相当性という問題が残ります。
これは、判例でも個別具体的に様々な判断がされていますが、具体的事情を考慮して解雇が著しく不合理であれば解雇権の濫用となります。
単純に言えば、多くの人が「解雇されてもしょうがないね」と思えるかどうかだと思います。

琴光喜関の場合は、野球賭博を常習的に行っていたそうですし、支払いをめぐり暴力団とのトラブルもあったようですが、これは本来の仕事である相撲とは関係のないところ、私生活上のトラブルといえると思います。
通常、私生活は個人の自由の範疇に属することで、使用者の支配が及ぼされるものではありません。しかし、非行行為が企業の社会的評価や信用を著しく害した場合に、企業として懲戒解雇や解雇もやむを得ないだろうというのが、大方の裁判での考え方です。また、会社での職務上の地位なども判断材料となります。
琴光喜関は大関という高い地位にありますし、相撲協会の信用、名誉を害したといえばそうでしょうが、彼にそういうことが理解できていたかどうかは疑問があります。親方がやっていたからやった、あるいは周りにそういう力士がいっぱいいたからやったのかもしれないし、自覚と責任がないのが悪いと言ってしまえばそのとおりですが、彼は、恐喝の被害者でもあり、解雇という重い処分が妥当であったのか、私には疑問が残ります。

お相撲さんというのは、十代の頃から業界に入りその世界しか知らずに大人になるわけですから、いきなり解雇されても今後どうすればいいのか本人もわからないでしょう。
普通の人よりもつぶしがきかないというか、人生に与える影響が大きいと思います。
現役大関が解雇されるのは初めてということですが、それなら、なおのこと、過去の様々な不祥事に照らして、相当重大な案件でなければならず、その点でも多少の疑問を感じます。
私は、琴光喜関のファンでもなんでもありませんが、猛省を促した後に再チャレンジの機会を与えてあげてもよかったんじゃないかなと思います。甘いでしょうか。
何となくすっきりしないなあと思っています。

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コメント


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解雇権濫用

私も琴光喜の件は解雇権濫用になるのでは、と思います。本人は周りで広く行われていた賭け事に自分も野球が好きだから加わった程度の認識しか有りません。ただ大嶽親方の大枚の掛け金に名前を貸した点が違法性を認識していたと認定されるかも知れませんし、大関としてとても不用意だったのでしょう。個人的には琴光喜に解雇権濫用で訴訟を起こして欲しいと思いますが、多分そのようなことはぬるま湯の日本では起きないのでしょうね。

石愛華 | URL | 2010年07月06日(Tue)10:25 [EDIT]


Re: 解雇権濫用

石愛華さん(お名前はなんとお読みするんでしょう?)
はじめまして。
コメントありがとうございます。
琴光喜関は全てを受け容れているようですから、訴訟はないでしょう。
「賭け事はいけないよ」と日ごろから注意していたわけではないのに、いきなり解雇はやはり社労士的には疑問をもちます。
力士の教育を怠っていた相撲協会に責任があると思いますが、名古屋場所を開催する時点で自覚が足りないのではないかなと、私は思います。

おばさん社労士     | URL | 2010年07月06日(Tue)11:02 [EDIT]