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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

「天地明察」を読む

夫から「簡単にすぐ読めるし面白いから読んでみな」と薦められていた小説「天地明察」をここ3日ばかりかけて仕事の合間や夜帰宅してからの時間に読みました。
江戸時代に幕府要人に囲碁の指南をする家の長男として生まれながら、算術(今でいう数学)の世界にのめりこみ、天文学と合わせてそれまでの暦の間違いを正して、新しい暦を作成するという壮大な事業を行った実在の人物の物語です。
「本屋大賞」を受賞し、昨日発表された直木賞候補(落選してしまいました)にもなっていました。

これを読んで、先ごろ亡くなった梅棹忠夫氏の「文明の生態史観」はホント正しいんだなあと妙に納得してしまいました。

「文明の生態史観」は、梅棹氏がアジア各地を旅した後に世界の歴史の発展について考察したもので、ユーラシア大陸の両端にある沿岸部の地域、西ヨーロッパと日本はその地域の特性から同じような文明の発達の仕方をしているというもので、内陸の中国やインド、ロシア、アラブなどもそれぞれ特徴的な文明の発達の仕方をしているというような、とても興味深く、またこんな考え方もあるんだということで私にとって衝撃的な本でした。

この「天地明察」の時代背景は、江戸幕府の初期から中期に移り変わるときで、戦乱の世から泰平の世へとなり、自ずから統治の仕方などを変えていかなければならないのですが、それをいち早く実践した会津藩主保科正之の話が私は興味深かったです。
彼は、二代将軍のご落胤として生まれ、一大名という立場ではあったが、三代将軍に信頼され、幕府の様々な政策を考え実行した人物で、会津藩でも善政といわれる統治を行い、「会津に飢民なし」と言われます。
島原の乱について徹底的に調べさせて武家諸法度を改正し、一揆の原因は凶作、飢饉、飢餓が背景にあると喝破して、「武家とは武士とは民の生活の安定確保を図る存在」で、戦乱の世においては領土拡大、侵略阻止、領内治安こそが安定確保であるが、泰平の世にあっては、「民の生活向上」が安定確保でありそれを目標としたのです。
凶作に備えて収穫の一部を貯蔵して、それを領民に貸し与えて利息を得て増やす、父のない家、身寄りのない老人などを支援するなど、今でいう福祉政策のようなことも行っています。

彼が死期を悟り、書き記させた中に「法を畏れよ、もし法に背けば武士でもこれを許してはならない」というくだりがあります。法治国家の概念は16世紀から17世紀にかけて王権神授説に反論する形でどんどん発展していったと思いますが、まさに同じ頃ヨーロッパ文明とは全く無縁の所で、それを言っている人がいたなんてと思い、にわかに「文明の生態史観」を思い出したというわけです。
その他にも西欧に負けないような高等数学を考えていた関孝和や、この小説に出てくる天文の観察から暦を作るというような高度な文明の発達があったということで、生態史観で書かれていることと一致するのですね。

小説そのものも面白かったけれど、私にはそんな別の意味で面白い本でした。
ところで、「天地明察」っていう言葉はいいですねー。なんかすっきりさわやかな青空を見るような言葉だなと思いました。

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