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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

パワハラの判断は難しい。

現在見直し中のある会社の就業規則にパワーハラスメントの規定を追加することをご提案しましたが、社長がちょっぴり難色を示されました。
社長は大学時代体育会系で、社員の指導についても時には強く叱責をしたりするようなことを容認していきたいと思っているので、そういう規定を作ることにより上司が部下を適切に指導することが困難になるのではないかと懸念されたようです。
私のご提案した内容ですと、何がパワハラにあたるかということもかなり具体的に書いてあります。パワハラの内容や必要性については過去記事に書きましたので(
参照)、そちらをご覧いただきたいと思いますが、その中に
「皆の前で怒鳴る、机や壁をたたいて脅す」
というような項目がありますが、社員を指導する上でそのぐらいの「荒事」も時と場合によっては必要だと、前述の社長は考えていらっしゃるのですね。
就業規則上の規定がブレーキになるのは困るというわけです。

「突発的に1回だけそうしたからといってパワハラというわけではありません。特定の人に継続的に人格を傷つけるような言動を繰り返すことを言うんですけれど・・・」
と言いつつ、社長の気持ちも理解できないではないなと思い、ちょっとその規定について文言などを考え直すことにしました。
私としてはパワハラ防止規定を削除するという選択はあり得ませんが、お客様に納得していただくということがまず第一ですから、パワハラについての最近の判例などを調べてみることにしたのです。

パワハラが裁判となるパターンというのは、継続的に行われることにより社員が強いストレスにさらされ、うつ病になり最悪の場合自殺してしまう、自殺しないまでも仕事ができなくなってしまうなどの場合です。
業務に起因する疾病ということで労災を申請する場合も多いのですが、会社側が協力してくれない場合も多く、労災と認められず裁判を起こす場合もあります。
また、パワーハラスメントの行為自体が不法行為であり、民法709条(注1.)による損害賠償責任、同法415条による債務不履行責任(使用者としての安全配慮義務違反)があるとして裁判を起こします。慰謝料請求などもされることがあります。
会社だけを訴えるのではなく当事者である上司個人も会社と同時に訴える場合もあります。
裁判では、そのパワハラとされる行為について違法性があったかどうかが問われます。

[注1.]民法709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

たまたま、購読している「ビジネスガイド」の9月号で最近のパワハラ裁判のいくつかの概略が掲載されていたので、それらについて判決文を調べてみました。
裁判というのは個別に様々な事情があり、それらを加味して判決を出しますので雑誌等で書かれている概略だけでは、具体的な事情がわからないからです。
そのうちのひとつは、一審では労働者側(本人は自殺しているので遺族が原告)の言い分を大筋で認めているのですが、互いに控訴した高裁では上司らによる叱責は「社会通念上許容される業務上の指導の範囲を超えるものとは評価できず」として不法行為ではないとして、会社側の安全配慮義務違反も否定されて、一審と二審では全く逆の結果となっています。(前田道路事件 一審松山地裁判平20.7.1 二審高松高裁判平21.4.23 上告)
この事件は、年収1000万円を超える営業所長が不正経理をしたことにより上司らから指導を受け続け、社内で自殺してしまい遺族(妻と子)が裁判を起こしたもので、普通の「労働者」とは違いますし、ちょっと特異な例ではあると思いますが、上司が部下を指導する上でどういう場合に違法性が問われるのかという判断の材料にはなると思いますので、来週にでも記事にしたいと思います。

他の判例でもそうなのですが、裁判では「社会通念上許される業務上の指導の範囲」と言う言葉を使って違法性を判断しています。
常識的に考えてあまりにも行き過ぎているかどうかということだと思いますが、前述のように同じ事件でも一審、二審と逆の結果になったりするということもありますから、これはなかなか難しい問題なんだなとあらためて思っています。
来週、冒頭の社長とまたお会いする予定なのですが、さて、この問題をどのようにお話ししたらよいか、ちょっぴり悩んでおります。

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