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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

パワハラの判断は難しい(2)。

先週、パワハラの判断は難しいという原稿を書きましたが、関連する判例をちょっとご紹介したいと思います。
一審と二審で全く判断が逆になった例です。(前田道路事件一審松山地裁判平20.7.1二審高松高裁判平21.4.23)
[事件の概要] A男さんは昭和36年生まれで昭和61年4月に土木建築業のM社に入社し、平成15年4月に四国のある営業所の所長に赴任します。
当時の給与収入は年収1009万円余りでした。
M社では各営業所は独立採算制で年間の事業計画を独自にたて、自分たちでいわばノルマとなる目標数値を設定していました。
A男さんは赴任して1か月後から受注高、出来高、原価等といった営業成績に関するデータの集計結果を報告する際に、実際とは違う数値を報告するよう事務担当者に指示を出します。
実際には受注していない工事を受注したかのごとくに見せる「架空受注」、未施行分を施行したかのごとくに計上する「架空出来高」、下請業者に対して請求書を止めてもらう「原価未計上」、ある工事の原価を別の工事に付け替える「原価移動」などで、これは不正経理にあたります。
同年6月、四国支店工務部長に就任したXさんは数字のバランスの異常に気づき、A男さんに是正を指示しましたが、詳細の調査は困難であり、それほどの額ではないだろうと思ったこと、またA男さんの将来性などを考慮して本人に任せ、平成16年初めごろA男さんから是正した旨報告を受けますが、実際には是正されていませんでした。

Xさんは平成16年4月四国支店長となりましたが、後任のYさんも経理担当者からの報告で異常に気がつき、A男さんを呼び問いただしたところ1800万円の架空出来高が計上されていることがわかります。
同席していたXさんも「去年も注意したのに何やってるんだ」と注意しましたが、大幅な赤字を出して修正する方法をとると本社に報告しなければならなくなり、元来優秀だったA男さんの将来に傷がつくことを心配して、Yさんも計画的に少しづつ解消していく方法をとることにします。
その後同年8月から工事日報を毎日FAXさせて気づいた点をA男さんの部下である直接の担当者Zさんに電話で指示、指導しましたが、A男さんに対して指導が行われることもありました。
Zさんは「この成績は何だ。これだけしかやってないのか」とA男さんがYさんに叱責されているのを電話ごしに聞いたこともありました。
同年9月10日に営業所で開催された業績検討会の資料についても、A男さんは数字の改ざんをZさんに指示しますが、資料を見てこれに気づいたYさんから「現時点で既に1800万円の過剰計上の操作をしているのにできるわけがない」「会社を辞めれば済むと思ってるのかもしれないが、辞めても楽にはならないぞ」などと叱責されます。
同年、9月13日A男さんは、
「怒られるのも言い訳するのも疲れました・・・」、奥さん宛に「労災などで訴えないように」と遺書を残し会社内の人目につかない場所で自殺してしまいます。

その後遺族は労災を申請しますが、M社は「遺族の今後の生活を最優先して考えるように」との社長の指示で全面的に協力したため、平成17年10月労災として認められます。
遺族はM社に連絡することなく、「パワーハラスメントが認められた」としてM社を非難する記者会見を行い、M社に対して総額約1億5千万円の損害賠償請求の訴訟を提起します。

営業所長という地位にあり一般の労働者とは違いますし、不正経理という特異な状況がありますが、社内の上司にあたる人から叱責や指導を受け続けたことで精神的にまいっていて、違法性のあるパワーハラスメントにあたるのかということが裁判での争点です。
遺族側の主張としては、不正経理ももとはと言えば会社側の過大な要求にも原因があり、本人はうつ病になっていたので、度重なる叱責が症状を悪化させ自殺に追い込んだとしました。
一審では、ほぼ大筋でそれを認めますが、不正経理という本人の過失割合を6割として、労災での遺族補償一時金などを差し引いて、総額約3100万円の支払いを命じます。
お互いに控訴して高裁へといきますが、今度は会社側の全面勝訴という形になり、現在上告中です。
長くなりましたので、明日また書きたいと思います。

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