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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

パワハラの判断は難しい(3)。

昨日の続きです。
この事件の場合、度重なる叱責、指導がパワーハラスメントという違法行為にあたるのかどうか、また、会社側が安全配慮義務を果たしていたのかどうかが大きな争点です。
遺族側は、恒常的な長時間労働や目標達成の強要があり、過度な叱責及びM社におけるメンタルヘルス対策の欠如などが自殺に追いやったとして訴えたのですが、地裁では大筋で認められたこれらの主張が、高裁ではことごとく否定されて遺族側の請求は認められず、訴訟費用も一審、二審ともに遺族側の負担とするとされました。
個別具体的に細かく事案を検討する裁判の場でさえ、全く逆の結論になってしまうわけですから、日常的に職場で起こることについてパワハラかどうか判断するのはやはり難しいと言わざるを得ません。

裁判の判決でよく使われるのは「社会通念上許される範囲の業務上の指導かどうか」ということです。
この事件でも、高裁では、是正指示をしてから1年以上も不正が修正されなかったことを考慮すれば、ある程度厳しい改善指導をすることは、上司らのなすべき正当な業務の範囲にあるとされました。
遺族側の主張である恒常的な長時間労働については、所定時間外労働を出勤簿などから推計して確認しても平均63.9時間から74.2時間で著しく長時間とはいえないとされました。
このあたりは、一審で認定された数値をもとに判断しています。
遺族側は、このような不正経理はこの会社ではA男さん以外にも行われていたと主張していますが、それは100万円から200万円ぐらいの範囲で翌月分を当月計上したという程度のもので、A男さんの場合とは質が違うと否定されていて、高裁は、A男さんの行った不正経理が特異なものであり、上司らの叱責も無理からぬところがあるという立場のように思われます。

会社側の安全配慮義務違反について遺族側は何もメンタルヘルス対策がとられていなかったと主張しましたが、M社の四国支店では職場のメンタルヘルスについての管理職研修を実施していて、A男さんも出席していることから、会社が何も対策をとっていないわけではないとされています。
このあたり、会社としては目に見える形で関心を持っていることをアピールしていくことも大事なのだと思います。
また、遺族側はうつ病だったとしていますが、回りの社員の証言などから疲れている、元気がない程度で病的なもの、まして自殺の可能性を感じた人はいないとして、上司らも自殺について予見することはできなかったとして、安全配慮義務違反はないとしています。

私としては、不正経理をしていた時点でアウトでしょという思いがありますが、遺族にしてみれば、会社のせいで自殺したんだと思ってしまうものなのでしょうか。
社長の指示で労災申請に全面的に協力するなど、悪い会社ではないと思うのですが。
普通、労災を認定してもらうのさえ苦労するわけですから。
一審でA男さんの過失割合を6割としていますが、会社側に4割も責任があるかなというところが疑問に感じました。
しいて言えば、1800万円とわかった時点で赤字を覚悟して是正して本社への報告もするべきだったのかなと思います。
それにより、A男さんだけではなく、Xさん、Y さんにも責任が及ぶ可能性がありますから、踏み切れなかったのでしょうか。
ミスを隠そうとしてかえって重大な結果を招くというのは世の中によくある話だと思うのですが・・・。

パワーハラスメントというのは法律に規定がありませんので、会社の裁量部分で気をつけていくしかないのですが、同じ内容の叱責や指導でも受ける側の性格や互いの信頼関係の有無などで、パワハラとならない場合もありなる場合もあるということだと思いますが、毎日のように繰り返し行われる叱責、指導は、やはりやられる方はまいってしまうでしょう。
ほめることもするなど指導にめりはりをつけることも大事だと思いますし、業務に関連のない人間性を否定するような言動も絶対にしてはいけないと思います。
日ごろから職場内で信頼関係を築くことや、部下の性格を見極めるなどが上司に求められることだと思いますが、個人の力には限界がありますし、ノルマ達成など上司も大変な思いをしている場合も多いと思いますから、会社という組織全体で取り組むべき問題だと思います。

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コメント


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極めて適切な分析、事案の見立てだと感心致しました。

| URL | 2011年01月15日(Sat)19:21 [EDIT]