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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

配転命令と育児・介護休業法26条

以前の過去記事で配転命令について使用者側の権利の濫用についての判断のリーディングケースとなっている判例を書いたことがあります。(参照)
この判例では、
①業務上の必要性、②不当な動機の有無、③労働者側が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益があるか。
の三点を主として総合的に考慮して判断しています。(東亜ペイント事件最判昭61.7.14)
この事件の場合、高齢の母(71歳)幼い子(2歳)保母としてフルタイムで働く妻など、家庭の事情により配転を拒否した労働者が懲戒解雇となり、裁判になったのですが、最終的には、懲戒解雇は取り消してその間の賃金と解決金を支払うということで和解しています。
先月参加した労使トラブルの研修(過去記事参照)でも配転命令についての違法性の判断などを勉強しました。
最近では、育児・介護休業法26条(注1.平成13年改正後の条文)について言及する判例が出てきていて、介護の必要度が高い家族などがいると、権利の濫用と判断される例も出ているようです。

[注1.]育児・介護休業法第26条  事業主はその雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。

「配慮しなければならない」と書かれていますから、これは義務なのですね。
全国に支店、支社のある大企業はもちろんのこと、中小企業でもある程度の規模になりますと、転居を伴う配転や出向などが行われるのは普通のことです。
採用のときに職種限定や勤務地限定がされていなければ、特に労働者の同意がなくても会社の裁量である人事権の範囲のこととして、配転が認められていると考えられています。
日本の場合、特に職種を決めず「会社に入る」という考え方が根強いですから、配転や異動などは日常的に行われています。
それを根拠づけるため、就業規則には業務の都合により異動や配転、出向などがあり、正当な理由なくして従業員はこれを拒むことができないなどと書かれているはずです。

就業規則には労働基準法をはじめとして法令にあることを落とし込みますから、私が作成する場合は、上の条文に加えて
「会社は、前項の異動を命じる場合において、子の養育又は家族の介護を行うことが困難となる従業員がいるときは、当該従業員の子の養育又は家族の介護に配慮するものとする」
という項を付け加えています。
育児・介護休業法で義務規定がある旨をご説明すると、事業主さんも理解してくださいます。
前述の研修でも、この育児・介護休業法の規定により、家族の介護に支障をきたすような異動については、裁判になった場合、会社側の配慮義務を重くみる傾向が最近出てきているという話がありました。
子供の養育については、転居してもなんとかなるでしょうと考える場合が多いらしく、子供の養育を理由として、配転の違法性を指摘された例はないようです。
しかし、ワークライフバランスという文言が行政主導とはいえ広く認知されつつありますし、労働契約法第3条第3項にも労働契約について「仕事と生活の調和に配慮しつつ締結し、又は変更すべき」と書かれたため、今後は子の養育に支障をきたすような異動についても、違法性を指摘される可能性もあり、私としてはこの26条が出てくる判例などについて注目していきたいと思っています。

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