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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

育児・介護休業法の私法上の効力

先月、労使トラブルの研修に行ったことは過去記事に書きました。(参照)
そこでは、いろいろなトラブル事例を学び、私としてはとても参考になった有意義な研修だったのですが、ブログでちょっと書きたいと思いそのままになっていたことがあるので、忘れないうちに今日書いておこうと思います。
昨年育児・介護休業法が改正され、今年の6月30日から施行となっています。(労働者100人以下の事業所は2年間の施行猶予の措置あり)
その中で、3歳未満の子を育てる労働者に対して育児のための短時間勤務制度の義務化というのがあります。
労働者が請求した場合には、
①1日の所定労働時間が6時間以下
②日々雇用される者
③その期間育児休業をしている
④労使協定で除外されている(勤続1年未満、所定労働日数が週2日以下、業務の実態により短時間勤務が困難)
以上の労働者を除き、請求があれば1日の所定労働時間を原則1日6時間とすることを認める措置です。

これらは、労働時間に関することですから当然就業規則に記載しなければなりません。(労働時間については必ず就業規則に記載することが労基法で決められている)
しかし、改正施行された後も就業規則が改正されていなくて、3歳未満の子を養育する労働者に対する短時間勤務制度がその会社にない場合はどうなるか?
研修でやった事例では、1歳までは短時間勤務を認めることになっていたが(就業規則で規定)3歳までとはなっていなかった会社で、法律が改正になったのだから、3歳まで短時間勤務を続けたいと申し出た労働者に対して、
「うちの規則では1歳までだからそれ以降は認めない」
と会社が拒否。
しかし、労働者側にも保育園の送迎に間に合わないという事情があり、強行突破的に短時間勤務を続けたため、規則違反で譴責処分となりボーナスも通常の6割とされた。というような事例です。

会社側の言い分としては、
「うちの会社は女性従業員が多く、法律どおりやっていたら業務が回らない。そもそも育児・介護休業法は国が事業主に義務を課す行政取り締まり法規であるから、会社と従業員との間の権利や義務を規定するものではないはず。労働局長からの助言・指導があれば責任を果たそうと思うが、個別に従業員一人ひとりに対応することは考えていない」
というもので、これは現実にあった話として事例集に掲載されています。
育児・介護休業法が会社と従業員の権利・義務関係を規定する法規ではないと考えれば、それは就業規則に規定されて初めて労使の間の権利・義務関係となる。私法上の効力が生ずるというわけです。
もちろん、私法上も要求する権利があるとする説もあり、なんと定説がまだないということで、私はちょっとびっくりしました。

労働基準法のような「この法律は労働条件の最低基準であるからこれを下回ってはいけない」ということが規定されている強行法規の場合は、就業規則に規定されていようがいまいが、その効力は絶対的で就業規則に労働基準法以下の労働条件が書かれていれば、それは無効となります。しかし、育児・介護休業法の場合はそうではないという解釈もありなんですね。
でも、労働局に行けば当然法令にあわせて就業規則を改正してくださいという指導を受けるでしょうし、その労働者に対しても短時間勤務を認めてあげてくださいとなるんではないでしょうか。
ちなみに、強行突破した労働者に対する懲戒は懲戒権の濫用となる可能性が高いです。
自らが法律にある義務を果たしていない事業主側には、懲戒をする正当な理由がないからです。それは、研修でも労働契約法7条(講師解説書には7条とあるのですが、権利濫用の直接的規定は労働契約法15条にあります)に照らし権利濫用になるだろうというお話がありました。
また、賞与のカットについては、働かなかった時間分のカットはやむを得ないとして、それ以上のカットはやはり違法とされるでしょう。(
過去記事参照)

私は、就業規則を作成する場合に、個別の事情により労働時間を短縮できるというような条文を加えることがあります。
もちろん、事業主さんが賛成してくれた場合ですが、育児に限らず生活者である労働者には様々な事情が生じる可能性があり、できる限り弾力的に対応できる就業規則にしておくことが必要だと考えるからです。
しかし、学者の世界というのは相変わらず私が思いもしないような考え方でいろいろと解釈論を展開しているのだなと、法律を勉強していた頃をなつかしく思い出しました。

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