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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる12年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

メンタルヘルス対策というのは難しい。

労働者の心の病の増加が言われ出したのは、ここ10年ぐらいでしょうか。
特に、長時間労働がもとで過労状態になり精神疾患を患った場合は、会社の労働時間管理について厳しく問われることになります。
最近、ちょっと調べた判例(富士通四国システムズ事件大阪地裁判平20.5.26)でもかなり厳しく会社の管理について問題にしています。
安全配慮義務を履行するためには、単に残業しないように助言・指導するだけではなく、禁止を明示した強い指導・助言を行うべきとしていて、会社もなかなか大変だなあと思います。
そう感じたのは、この裁判を提起した労働者側にも多少の問題があり、判決でもそれを認めていますが、それでもやはり会社に責任があるとされているからです。

この裁判の原告である社員Aさんは専門学校卒業後、平成14年4月にソフトウェア開発会社に就職して、研修終了後ある顧客向けのソフト開発プロジェクトに配属されます。
この会社では、新入社員に対して2年間実務を通じて教育を行うことにしていて、Aさんには先輩社員のBさんがついて指導にあたりました。
配属当時は意欲的だったAさんですが、開発が本格化した入社10箇月目ごろから態度が消極的になり作業の遅れが目立つようになりました。Bさんが何とかフォローして調整していました。
Aさんはこの頃から月に5回程度無断で始業時刻に出勤せず、11時から正午頃に出勤して夜遅くや時には早朝まで勤務するようになりました。Bさんは、そのような時には休んだ方がいいと指導しますが、同じ事業所に勤める交際相手の女性Cさんと昼食をいっしょにとるのを楽しみにしているのだから、そのようなことは言わないでほしいと言ったり、特段の仕事がないのに残業しているようなこともあり、Bさんが仕事がないのなら早く帰るようにと指導すると、Cさんの退社を待っているからと言ったことが複数回ありました。
その後もAさんの作業の遅れは改善しなかったため、Bさんは会社と相談の上協力会社に10年勤める人に応援を頼み、人員を補充して対処することにしますが、そのための業務移管の会議にもAさんは出席せず携帯電話にも応答せず、会社のあるビル内を徘徊していました。

数ヵ月後、AさんはBさんとの雑談の中で夜眠れないと話したため、Bさんは心診療内科の受診を進めますが、自分に限ってそんなことはないとAさんは行く必要がないと言っていました。しかし、その後Aさんの体調は悪化してちょうど入社してから2年たった平成16年4月から病気を理由に欠勤して、10月以降は休職扱いとなりました。
結局、Aさんはうつ病と診断されます。
Aさんは、欠勤中の平成16年6月に違法なサービス残業について労基署に申告して、会社から未払い残業代を受け取ると同時に、労災も申請してその後認められ休職中の休業補償1057日分計788万9150円をを受け取ります。会社からは、休職期間中見舞金として合計975,000円を受け取っています。
また、欠勤を始めた頃にブログを開設して会社の対応を激しく非難しています。同年10月に訴訟を起こしてからはテレビインタビューを受けたりもしています。

労災が認められたことからも分かりますが、Aさんの発症前6箇月の時間外労働は1個月あたり105時間と認定されていて、かなりの長時間労働でした。
しかし、会社はそれを野放しにしていたわけではなく、タイムカードに基づく出勤簿と作業予定表や報告書により社員の労働時間を把握して、時間外労働が1個月あたり40時間を超える社員については、健康診断個人票の提出を求め、産業医との面接もさせていました。
Aさんの場合、配属後の平成14年7月から欠勤となる直前の平成16年2月までの間に14回の面接を受けています。
ここまで書いてきて、Aさんは会社に在籍のままだし、一体何を訴えたのかなと思ってしまいますが、うつ病の発症原因は過重労働であり、会社の安全配慮義務違反なのだから、うつ病になりこうむった損害の損害賠償と慰謝料合計1257万4332円を支払ってほしいという内容の訴訟を起こしたのでした。

それに対する判決は、会社の安全配慮義務違反を認めますが、支払額は112万5000円プラス年5分の利息とかなり小額となりました。
Aさんは、会社の指導を無視してあえて自ら選んで深夜まで勤務していたとも考えられ、疲労の度合いが増した一因であること、社会的に未熟だったとはいえ身勝手な行動もあり、損害の全てを会社に負担させるのは公平ではないとして、過失相殺により損害の3分の1に減額するのが相当であるとしたものです。
労災給付によりすでにその損害は治療費を含めて全額補償されていて、慰謝料についても会社からの見舞金を差し引いて、弁護士費用10万円とともに前述の額となったのでした。
 しかし、一部にせよ損害賠償責任を認め会社側に労働時間管理の甘さがあったと指摘しています。
長くなりましたので、続きは明日。

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