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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

メンタルヘルス対策というのは難しい(2)

昨日の続きです。
最近攻撃的なうつ病というのがあると言われています。
これまでのうつ病のイメージは、まじめで几帳面な人がストレスを抱え込んでしまった結果かかる、そしてうまくいかないのは自分のせいだと自分を責めて落ち込む、自殺願望などもあるというものです。
しかし、近年、自分は悪くないのに回りのせいで自分は病気になったという前提にたち、周囲の人々と軋轢を起こしてしまうタイプのうつ病もあるということが言われています。
私は恥ずかしながら不勉強であまりよくわかりませんが、一口にうつ病と言っても個別にいろいろな症状があり、枠にはめこむことなどできないようです。
考えてみれば、どんな病気だって、病名が同じだから症状がみんないっしょというわけではありませんものね。
Aさんも従来型の多くの人が持っているイメージのうつ病とはちょっと違うタイプのうつ病のようです。
労災を認定されましたから、業務上の疾病ということになり療養のための休業中とその後30日間は解雇できません。
会社としては、病気を理解しAさんとしっかり向き合うしかないと思いますが、訴訟も起こされていますしなかなか厳しい状況ですね。

会社はどうすればよかったのでしょうか。
裁判で現れている事実からだけですので想像の域を出ませんが、Aさんは入社時には優秀な社員と判断され、最初は本人も意欲的だったようです。
プロジェクトが進むにつれて作業が遅れがちになりそうこうしているうちに、Aさんの常識はずれの行動が目立つようになります。
会社の指導に対しても、本人は特に悪びれているふうでもなく、交際相手と昼食を食べるとか、交際相手を待っていて仕事もないのに残業するとか、彼の中では正当な理由らしいのですが、他人から見るとかなり身勝手な理由を述べています。 
同時期、会社は、Aさんが長時間労働になっていることを把握していて、Aさんにあわせて 作業スケジュールを変更したり、上司が作業を手伝ったりAさんの作業を軽減するために増員したりしています。
Aさんが体調不良となった後、会社は何度も面接してAさんの希望と症状をヒアリングするなどして、社内のヘルスケア相談部門(臨床心理士)との面談、指導を仰ぎ、Aさんの主治医とも会い、実家を訪問して治療に向けた進言をするなどしています。
会社としては、Aさんのメンタリティーに多少の問題があることを把握して、できる限りの対策を講じようと努めていたようにも思えます。

結局、もう少し早く何とかしていればよかったのかなあと思いますが、うつ病になるかもしれないという予測というのは非常に難しいことではないかと想像されます。
プロジェクトに関しても、他の新入社員と比べて明らかに作業の進捗状況が悪いのなら、当然能力不足が疑われるのですから、配置転換を検討してみてもよかったのではないかと思われます。会社としては、 じっくり育てたいという思惑があったのかもしれず、このあたりも会社としての見極めは難しかったかもしれません。
ただひとつ言えることは、Aさんが個人的事情を持ち出したりしていたこともありますが、長時間労働になっていたことは事実であり、その事実に対して、やはり会社はもっと断固たる措置をとるべきだったのだろうということです。裁判で会社が述べているように、類似の環境下で働いている他の社員の中にはうつ病を発症した人はいないということもあり、会社もちょっとそのあたりを甘く考えていたかもしれません。
長時間労働によりうつ病になるという例は世の中にはたくさんありますから、うちの会社は大丈夫なんてことはあり得ないと考え、長時間労働をとにかく是正するということを意識すべきだったと思います。
 
その点については、判決でも「最終的には、業務命令として、遅れて出社してきた原告の会社構内への入館を禁じ、あるいは一定の時間が経過した以降は帰宅するべき旨を命令するなどの方法も念頭に置いて、原告が長時間労働をすることを防止する必要があったというべきである」として、会社が強い態度で長時間労働を防止することを求めています。
その上で、会社が「原告の長時間労働を防止するために必要な措置を講じたということはできない」としていますので、指導、助言ではなまぬるいということを言っています。
Aさんの場合、100時間以上の時間外労働をしていた月もあり、裁判になるとどうしても会社側は分が悪いと思います。

会社としては、裁判などにならないようにするのが一番よいわけで、何とかAさんと良好な関係を築くことができなかったのかと思うのですが、裁判でも認定されているように、Aさんには、「社会的未熟さや公私の別をわきまえない考え方が」あり、指導するにしても難しい面があったかもしれません。
そうなると、採用時によく見極めるしかないのかとも思いますが、長時間労働をしていなければおそらく発症していなかっただろうと裁判では結論づけられていますので、やはり、労働時間管理の徹底と、長時間労働は異常なことなのだという会社側の意識改革も必要なのだと思います。
労働時間の管理はとても難しいことなのですが、それにも増して様々な性格や価値観を持った社員ひとりひとりのメンタルヘルス対策の難しさを感じる裁判例でした。

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