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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

「生理休暇」についての権利の濫用

昨日、長すぎる「懲戒休職」は無効とした判例(岩手県交通バスガイド懲戒休職事件 盛岡地裁判平8.4.17)をご紹介しました。
その判例をちょっと見てみますと、興味深い内容が含まれているので、今日、あらためて書いてみたいと思います。
この「懲戒休職」処分を受けたのは貸切バスのバスガイドをしている勤続20年のA子さんで、懲戒権の濫用であるとして会社を訴えた裁判です。
A子さんは、民謡が趣味らしく民謡大会に出場するために、会社の出勤要請を拒否してバス業務の繁忙期である10月、11月に代休や有給休暇、生理休暇などを取得することが度重なり、処分となったものです。
会社側の言い分としては、車掌服務規程に繁忙期にはみだりに欠勤してはならない旨の規定があり、A子さんもこれを承知の上でバスガイドとして雇用契約を結んだはずだ。
A子さんが会社の都合も考慮せず身勝手に休暇を取得して、会社の業務計画、運営業務に支障を生じさせた。
就業規則には、このような場合は1箇月以上6箇月以内で懲戒休職をさせるとしていて、会社の懲戒権濫用ではない。
というものです。

これに対して、A子さんは当然のことながら労働者の正当な権利を行使したにすぎないと反論します。
裁判所は、まず代休については「休日同様に尊重すべきもの」として一方的に使用者の都合を優先させることはできず、懲戒処分の根拠とはならないとしました。
繁忙期の有給休暇取得については、会社の時季変更権に関する規定もあり、10月にとった有給休暇については、会社の時季変更権を認めて会社の要請を拒否して休暇を取得したA子さんについて、処分は正当性があるとしました。

生理休暇については、結論はこれもまた処分の根拠となるとしています。
その理由として、A子さんの勤務状況のデータが述べられています。
「乗車日数の比較的多い同僚ガイドと比較すると、勤務日数で5%、乗務日数の出勤日数に対する割合で約14.4%少なく、生理休暇は50日多く、繁忙期、閑暇期を通じて乗務率が少なく、生理休暇が多い点が特徴である」としています。
判決では生理休暇の歴史についても触れています。
旧規則(女子年少者労働基準規則)では、生理に有害な業務も定めていましたが、生理休暇は母性保護措置とは関連性がなく、欧米では生理休暇規定そのものがないということから批判があり、昭和60年に有害業務については廃止され、その後、現行の「生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したとき」使用者は生理日に就業させてはならないと改正されました。

A子さんの場合、平成4年11月13日に生理となったため、11月14日から16日まで生理休暇を取得して、15日夜、夫の運転する車に乗り4時間かけて民謡大会の会場に行ったという事実があります。
これについて裁判所は、生理日の就業の困難さを厳格に証明することは難しく、それをすることにより生理休暇取得の権利が抑制されるおそれがある。
しかし、だからと言って請求すれば必ず取得を認め、取得したからには休暇に何をしてもよく、会社が干渉できないとしたら不正取得の抑制が事実上できなくなる。
そのようなことが横行すれば労働義務の不履行が見逃され、生理休暇を取得しない従業員との不公平が生じる。
ひいては、「女子労働に対する社会の信頼ないし評価が損なわれるおそれがあるので」生理休暇制度の運用は難しい面があるけれど、取得者が月経困難症であるとの証拠もなく取得して、休暇中の行動などから判断して「就業が著しく困難でないと明らかに認められる場合」は不正取得として許されないとして、A子さんの場合はそれに該当するとしました。
従って、会社の処分は正当な理由があるけれど、やはり6箇月は重すぎで、3箇月が妥当であるとの判決となりました。

生理日の状況は個人差が大きく辛い人は本当に辛い場合もありますし、その時の体調によっても違いがあり、そういう時に無理をして仕事をするのは業種によっては事故につながったりすることもありますから、労働者としては状況に応じて権利を行使するのがよいでしょう。
会社としては、請求されたら何も言わずに認めるのが原則だと思いますが、一度の取得日数が多いとか、度々取得するような場合は、権利の抑制にならないように配慮しつつ本人と話し合う余地はあるかもしれません。
無給にするか有給にするかは法律で定めがありませんから、無給としている会社が多いと思いますが、私が以前就業規則を見直した会社では2日間だけ有給としていました。
無給か有給かは会社の裁量で決めて就業規則できちんと定めることが必要です。

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