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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

求人票と話が違う労働条件

先日、勉強会を立ち上げていっしょに勉強している社労士仲間から、「労働条件が最初に提示された条件と違う場合の事業主に対するペナルティーは、労基法15条2項にある、労働者側の即時契約解除=事業主からみれば、やめられてしまう」しかないのかな?
というようなメールが勉強会のメーリングリストにありました。
労基法は、各条文の違反に対して罰則もある強行的な法規ですが、確かに、事実とは違う労働条件を提示したということに対する直接の罰則はないですね。
労働条件の明示違反については、30万円以下の罰金というのがあるのですが・・・。
この話でよく問題となるのは、労働者を募集するときの求人票に書いていた労働条件と実際に働き始めたときの労働条件が違う場合です。
もちろん、求人票より不利益な労働条件の場合です。
応募してから正式に労働契約を結ぶときに、あらためて労働条件を提示して、求人票とは違うということを納得の上で働くのならいいのですが、労働条件を明示しない、又は、十分に説明しない場合に問題となるのです。

求人票のとおりの労働条件だろうと働き出したら、実際にはもっと不利益な条件だった場合に、辞めずに働き続けたとして、求人票に記載されている内容が労働条件として生きてくるのかが問題となります。
裁判例は肯定例、否定例ともにあり、一概には言えないようです。

否定例としては、新規学卒内定者の基本給について、大学に出した求人票には見込み基本給額を記載していましたが、入社後に支払われた額がそれより低かったため差額を請求した事案です(八州事件 東京高裁判昭和58.12.1)。
求人は労働契約の申し込みの誘引であり、求人票はそのための文書なので、労基法ではなく職業安定法の規制を受ける。本来、そのまま契約条項になることを予定しない。そして、特に採用内定という特殊な労働契約について、賃金を含む労働条件が契約締結時に全て確定していなくてもよいとして、「採用内定から入職までの間に逐次内容が明確になり、遅くとも入職時に確定する(本件もそうである)という実情にも合致する」
として、労働者側の請求を退けています。
しかし、求人票に記載した見込み額を著しく下回る額で確定すべきではないとして、一定の歯止めをかけています。

肯定例としては、中途採用者について職安の求人票に「常用」と記載されていたことが、期間の定めのない労働契約が締結されたことになるとした事案があります(千代田工業事件大阪高裁判平成2.3.8)。
求人票そのものの役割として求職者に真実の労働条件を認識させた上で、他の求人と比較して選択する機会を与えるものとした上で、「求人票記載の労働条件は、当事者間においてこれと異なる別段の意思表示をするなどの特別の事情がない限り、雇用契約の内容となるものと解する」としています。
また、「求人者は、雇用契約の締結に際し、労働基準法15条に従って労働条件明示義務を履行することにより雇用契約の内容となることを防ぐことができる」として、事業主側は、求人票と違うことを明示するチャンスがあるんだから、その時にちゃんと言いなさいよということも言っています。
同じ趣旨で退職金ありとなっていた求人票を優先させた事案もあります(丸一商店事件大阪地裁判平成10.10.30)。
求人票と違う場合にはきちんと説明して納得して働いてもらうことが必要だということだと思います。

さて、冒頭のペナルティですが、労基法上にはありませんが、民法で解決しようとすれば、明示された労働条件の履行を請求し、応じなければ債務不履行による損害賠償を請求できるということになりますが、普通は裁判まではなかなかできませんね。
話し合って解決するのが一番いいし、労働者側も労働契約締結のときに、しっかりと労働条件は確認することが大事でしょう。
労働条件の明示については、当ブログの過去記事をご覧ください。(
参照)

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