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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

客観性が求められる労働時間管理

最近、未払い残業代の問題などで労働時間について争われる裁判例が増えています。
厚生労働省では平成13年4月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(
参照)を出して、労働時間の管理は使用者の義務であることを明確にしています。
労働基準法にある割増賃金支払義務(37条)、賃金台帳記入義務(氏名、性別などともに労働時間数を記入)(108条)に照らしても、使用者には各労働者がどれだけ働いたか正確に把握する義務があるのは明らかです。
前述の「基準」では、労働時間の把握の方法として、①使用者自ら現認する、②タイムカード、ICカードなどの客観的記録に基づき確認、記録するなどが挙げられています。
未払い残業代請求事件では、労働者側が手帳などに自ら記録した時間をもとに請求する例がありますが、裁判ではあくまでも客観的な記録を重視するため、手帳の記録全てを認めるというより、その記録を検証して客観性をまず判断します。
手帳の記録ではなく、パソコンのログデータから労働時間を算定した例もあります。(
PE&HR事件東京地判平18.11.10労判931-65)

というわけで、労働時間管理について深くつっこんだ勉強をしましょうと、懇意にしている社労士仲間と月1回勉強会を開いていろいろと議論をしています。
とりあえず判例を勉強していこうというわけで、仕切り役をして題材を選び、資料作成、説明等持ち回りでやっています。
先週、私が選んだ判例(三晃印刷事件 東京池判平9.3.13労判714-21、東京高裁判平10.9.16労判749-22)でも、いくつか面白い裁判所の判断があったのでご紹介したいと思います。
この事件はいわゆる固定残業制をとっていたときの、割増賃金未払いについての請求事件です。

固定残業制度の場合、決められた残業時間を上回る残業をした場合にはその分の差額を支払うという運用をしなければ違法です。
それをしていなかったということで労働者側19人に提訴されたのですが、裁判所は労働時間の特定ということについていくつか判断しています。
この会社は、就業規則上の終業時刻は午後6時でしたが、仕事がなければ午後5時以降自由に帰宅してよい、ただし「終業時刻が午後5時であることを権利として主張しない限りにおいて認める」という変則的な労働時間管理を行っていました。
それについては、再三労働組合とも合意を取り交わしていました。
しかし、実態としては午後5時終業ということも多かったため、労働者側は午後5時を起算点として割増賃金を請求したのです。
これについて裁判所は、就業規則上の午後6時を起算点としました。
提訴した一人の労働者が採用募集の際に終業時刻が午後5時と説明された事実がありましたが、この会社では、就業規則に終業時刻が午後6時であることが明記され、全社員に配布して、新人研修、説明会などで午後6時であると説明していたからです。
労働組合との再三の合意も重要視しました。
やはり、就業規則で明記して労働者に周知していたということを重く見ていると思います。

しかし、平成20年3月施行の労働契約法では個別に就業規則より良い条件で契約した場合、そちらを優先するという考え方が示されていますので、労働契約法施行後であったらどうだったかなと、ちょっと疑問のでるところです。

労働者側はタイムカードの打刻時刻により労働時間を算定して請求しています。
これについても、タイムカードの打刻時刻は現実の始業、終業時刻とはずれるのが普通ですから、会社側は全てが労働時間ではないと反論しますが認められませんでした。
会社側がタイムカードの記録に基づき各社員の個人別出勤表を作成して、労働時間管理を行っていたという事実があったからです。
また、15分単位で0.25時間加算するという方式で出勤表を作成していたため、多少のずれは解消されるだろうとの判断も示しています。
この事件には、まだ興味深い裁判所の判断があるのですが、長くなりましたので続きはまた明日書きたいと思います。

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