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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

なくならない過労死雑感

「過労死」という言葉が世間に認知されるようになったのは、一体いつ頃からかなと考えてもあまりはっきり思い出せません。
直接の「過労死」とはちょっと違いますが、当ブログで過去記事にしている「電通事件」は長時間労働による心身の疲労による自殺という点では過労死に近いものがあり、社会的にもインパクトが強かった事件だと思います。(
過去記事参照)
名だたる大企業で社員の健康管理をするための措置も整っていたけれど、新入社員がそれを積極的に利用する雰囲気はなかったようで、裁判でも全面的に会社の責任を認めています。
昨日、大手住宅設備機器メーカーの社員の遺族が、社員の死亡の原因は長時間労働にあるとする裁判を提起したと報道されました。
亡くなった社員は死亡当時まだ36歳だったとのことです。

社員は2008年に入社後住宅設備の訪問販売に従事していましたが、昨年3月業務中に倒れ虚血性心疾患で死亡したそうです。
遺族側の主張によると亡くなるまでの2年間の時間外労働時間が毎月178時間を超えていたそうです。
裁判になりますと、原告、被告とも自分たちに有利な結果を導こうと、過大な数字を出してきたり、客観的な事実とは違うことを主張したりすることはよくあることなので、直ちに「178時間」を信じることはできません。
多分、裁判を進めていく上で労働時間の算定が細かく検証されていくことになるのだと思います。
しかし、本件の場合、既に労災が認定されていますので、認定基準以上(事件前1か月100時間又は6か月平均して80時間)の時間外労働をしていたことは間違いないのでしょう。
裁判でも、使用者側は相当厳しい状況になるのではないでしょうか。

報道によると、売上が低いときには上司から「上げるまで帰ってくるな」と言われていたとか。
真面目な人ほど、それを真に受けて働き過ぎてしまうのでしょうか。
「そんなこと言ったって売れないもんはしょうがないじゃん」
と開き直れるぐらいの図太さがないと、世の中なかなか生きずらいということでしょうか。

前述の電通事件の最高裁判決では、労働基準法による労働時間の制限と、労働安全衛生法65条の3(注1)を根拠に、
「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するのに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的付加等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当」
として、使用者側の安全配慮義務の存在についてはっきり肯定しています。
また、
「使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである」
として、直接の上司にも使用者同様の責任があることを示しています。

〔注1〕労働安全衛生法65条の3  事業者は、労働者の健康に配慮して、労働者の従事する作業を適切に管理するように努めなければならない。

上司たるもの部下を叱咤激励するときにも部下の性格を見極め、よく考えて効果的に行うようにしなければいけないということでもあると思いますが、上司自身がノルマに追われる場合も多いと思いますので、会社勤めをしている人たちはなかなか大変だなあと思います。
この最高裁判決は平成10年ですが、その後平成20年3月から労働契約法が施行になり、第5条で使用者の安全配慮義務が明記されました。今後はさらに使用者に厳しい目が向けられることになると思います。
使用者側は十分にそれを自覚して労務管理を行っていかなければ、このような事例はなくならないのだろうと思います。

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