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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

離婚後300日の壁 民法772条

民法は私人(注1)間の法律関係を定める法です。


注1 国家あるいは公共という立場を離れ、私的な立場からみた一個人。国家または公共のために働く「公人」に対する語  (内閣法制局法令用語研究会編 法律用語辞典より)


遠く明治の時代に、最初はフランス民法典、後にドイツ民法草案を参考に起草されました。1898年に施行された後、度々改正されましたが施行当時の内容があまり変わっていない条文もあります。


この中の772条というのは、①妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。


②婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消の日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。


普通に幸せな結婚生活を送っていれば何の問題もないのですが、ずっと夫婦仲が悪く、妻が別の人と交際してその後離婚して交際相手と再婚したとします。再婚後に新しい夫の子供を産んだとしても、再婚後300日を過ぎていなければ元夫の子とされてしまうわけです。再婚後に懐胎したことが間違いなくても、早産で300日たたないで産まれてしまったなどという場合も同じです。

2、3日前だったと思いますが、そのような経験をした人たちが法律の改正、またそのような規定の周知を求めて要望書を提出したそうです。


このような場合、元夫が元妻(子の母)に対して嫡出否認の訴えを起こし自分の子でないことを主張できます。(774条)判例、学説では妻が夫によって懐胎することが不可能な事実のある時には、これを認めています。例えば、①事実上の離婚状態で夫婦関係が断絶していた ②夫が行方不明 ③夫が海外滞在中、あるいは在監中 などの場合です。


なお、この訴えは夫が出生を知った日から1年以内に提起しなければなりません。(777条)


また、上記のように元夫の子である可能性が全くないと思われるような場合、元夫の嫡出否認を経ずに、子が実の父である再婚相手に認知の請求をすることを認めた最高裁判例もあります。(最高裁判決昭和44年5月29日)これは、子またはその直系尊属または代理人が認知の訴えを提起できるとする規定に基づき、父子の関係をはっきりさせたい時に行う強制認知(787条)という方法をとって、離婚後300日以内に生まれたけれど、元夫の子ではなく、新夫の子だということをはっきりさせたものです。


いずれにしても、普通に出生届を出しに行くと、離婚後300日以内だと元夫の子にされてしまうため、戸籍のないままにしているお子さんもいるとのことで、子の福祉という観点からはちょっと問題ですよね。


前述の要望書を提出した方たちは、裁判などを起こさない限り自分達の子供を元夫の子とされてしまうことは納得できないとして、DNA鑑定などで判断するよう法改正してほしいと訴えています。


民法772条は夫婦が同居し正常な婚姻生活を送り、妻が不倫をはたらくなんてあり得ないということが前提となっています。施行当時と今とでは男女関係の規範意識には大きな差があったと思います。


現在では、結婚前の同居や「できちゃった婚」は当たり前、離婚後再婚してすぐに子供を産んだとしても「できちゃった再婚」としてさしたる驚きもないでしょう。すべからく法律ができた時の前提が崩れ去っているのです。良し悪しは別としてそれが現実です。法的規範と現実的な道徳観とに大きなずれがあるのです。


その上で772条を考えると、やはりDNA鑑定などを取り入れてもう少しすっきりしたものにした方がよいのではないかと思います。何よりも生まれる子にしてみれば、実の父以外の人が父とされるなんてよくないですよね。


ただ、今のところ「300日の壁」は厳然とあるわけですから、今後離婚して恋人と再出発しようなんて思っている方は、こんな規定があることを頭にいれておいた方がよいと思います。


[本日の参考文献] 民法Ⅰ山田卓生他 有斐閣   親族・相続 伊藤真 弘文堂 プリメール民法5 千藤洋三他  法律文化社

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