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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

労働者の受給権が強い中退共制度

今年の初め頃、私の関与先で適格退職年金制度から中小企業退職金共済制度(略して中退共と呼んでいます)に移行した会社があり、それに伴い退職金規程を大幅に修正したため、その頃退職金について随分勉強しました。
一般の方は退職金制度などあまりご存知ないと思いますが、どちらも、従業員に対する退職金を積み立てて準備するための制度です。前者が来年3月末で廃止されることになったため、前者を利用していた会社は他の制度への移行をしなければならず、中小企業の場合、そのうちの一つの選択肢が後者であるというわけです。
他にも確定拠出年金、確定給付企業年金制度などがあります。
この中小企業退職金共済は主として常時雇用する従業員が300人以下(又は資本、出資の額が3億円以下)の会社が加入できる共済制度で(業種により加入条件が変わります)、中小企業退職金共済法という法律があります。
会社が従業員個人個人に掛金を決めて、会社が全額積み立て従業員の退職金のための準備金とするものです。
退職するときは、従業員個人が共済制度からじかに退職金を受け取るため、労働者保護が強い制度です。

冒頭の会社は、7割を内部留保で3割を積み立て制度を利用するというやり方だったため、それに合わせて規程を作成しました。また、その後、就業規則を作成した会社で、やはり中退共制度に加入して、全額、その積立金で退職金を支払うという会社もあり、その会社もそのような退職金規程を作成しました。
通常は、そのような外部積み立て制度を利用する場合には、社内の規程をそれに合わせて、会社の退職金制度にうまく組み込んで規程を作ります。
特に、中退共の場合、中小企業退職金共済法という法律があり、掛金のかけ方から本人が死亡したとき受け取る遺族の順番まできちんと規定されています。
従って、それらを盛り込んで退職金規程を作成するわけです。

しかし、そのように社内規程をうまく整備していない場合、退職金規程にある退職金と中退共から受け取る退職金との金額に違いが生じて、特に社内規程より多い額を退職者がもらってしまった場合、会社は差額を返せと言えるのか?
積立金を支払ったのは会社なのだから、会社の規程にのっとり多い分を返してほしいとして裁判になった例もあるのですね。(ジー・アート不当利得返還請求大阪地判平22.9.15)
昨日、判例要旨集を眺めていて見つけました。
退職金について勉強したときにはその判例は知りませんでした。
結論としては、労使間の契約と、中小企業退職金共済法という強行法規とでは、当然法規の方が効力が強いと考えられるため、法律にのっとって受け取った中退共からの退職金を労使の契約内容に基づき返せなどとは言えないというものです。
この制度は中小企業の従業員の退職金を確保して福祉の増進と雇用の安定を図り、ひいては中小企業の振興と発展に寄与するという目的があります。
 新規に加入した場合、一定期間国が掛金の一部を肩代わりしてくれたりして事業主にとっても利益のある制度です。
裁判では、この目的に鑑み労働者の権利の保護を重要視したものと思われます。
法律は、目的と趣旨を理解することが真のコンプライアンスであるということだと思います。

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