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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

思想差別で和解 解決金10億円

先週の新聞記事だったのですが、労働組合活動や特定の政党への支持を理由に昇進などの差別を受けたとして、従業員が大手造船メーカーと交渉していた件での裁判外での和解が成立したそうです。


会社側は60年代後半から差別を続けてきたとのことです。従業員168人が謝罪や損害金の支払を求めていましたが、会社側が差別を認め解決金10億円程度を支払うことで和解が成立しました。


これに先立ち、2000年に8人の従業員が裁判に訴えていた同様の事案が、会社側が過去の差額賃金や解決金約1億6800万円を支払うことで2004年に和解が成立しているとのことで、それを受けて前述の168人が裁判外で会社と交渉を続けていたそうです。

これは、個別労働関係紛争解決促進法に基くのか、労働組合として団体交渉したのか記事ではよくわかりませんが、いずれにしても裁判外でお金で解決したということですね。これから労使の争いは裁判よりも手っ取り早い裁判外の交渉が増えていくことになると思います。


労働基準法では、使用者は、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由として労働条件を差別してはならないという規定があります(第3条)


信条というのは、「宗教的信条だけでなく、政治的信条をも含み、かつ、政治的基本理念に留まらず、国の具体的な政治の方向についての実践的な志向を有する政治的意見をも含む」とする判例(大阪地裁昭和、44.12.26)があります。多数の判例、学説もこれを肯定しています。


ですから、前述の大手造船メーカーが組合活動や特定の政党支持を理由に、社員の労働条件を差別していたとしたら、弁解の余地はないわけです。そのために早期に解決金で和解したということでしょう。随分高くついてしまいましたが、経営者は法令を軽く見てはいけないということだと思います。


経営者側には、採用の段階では信条による選別を認める判例があります。(最高裁大法廷判決昭和48.12.12)


「企業者は自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定できる・・・」として、労働基準法3条は雇い入れ後の制限で雇い入れようとする時の制限ではないとしています。


学説では、この判例に理解を示しながら、①労働者の思想信条は労働者の人格の中核をなす、②思想信条は直接労働能力と関係しない ③採用拒否は解雇同様労働の機会を奪う ④憲法により、思想信条の自由、法の下の平等は私人間においても最大限尊重されるべきとして、採用拒否を違法と考えています。


ただ、前述の判例があるので、一般的には採用の時に労働者の思想、信条を調査するのは違法ではないとされていると思います。


もし、私が経営者だったら、組合活動は労働者の当然の権利として認めるとして、特定の宗教団体などの宣伝などされたら、やはりちょっと困ると思います。就業規則で社内ではそのようなことをしないというような規律を作るだろうと思います。


〔今日の参考文献〕 別冊ジュリスト労働判例百選 菅野和夫他編P20~21  P54~P55  労働基準法 厚生労働省労働基準局編 P70~72

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コメント


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鈴木さんは凄いなぁ

こんにちは。

毎日毎日鈴木さんの記事を拝見しておりますが、いつもいつも凄いなぁと思ってしまいます。

常にアンテナを張り巡らせて情報を収集し、それを自分なりに解釈し、発言できる鈴木さんには感心してしまいます。

正直今日のような記事は私には書けません。。
また、アンテナは張り巡らせているつもりですが圏外の部分がまだまだあるようです・・・

しかし負けてられません!!
精進、精進、精進あるのみ!!

これからもサイトを通して勉強させてください。

卯年 | URL | 2007年02月01日(Thu)17:49 [EDIT]


そんな、たいした事ないんですよ

卯年さん
こんばんわ。

ほめていだくのはうれしいんですけど、私はそんなたいしたことないんですよ。
社労士の仕事に関係のあることを中心に、日々の雑感を書いているただのおばさんのブログです。

今日のような記事はきちんと法律を勉強した人なら書けると思いますし、多分、卯年さんがブログを書いたら私にはとても書けないような記事がたくさん出てくると思います。
世代や育った環境が違えば感じることも全然違うでしょうから。

だから、人との触れ合いって貴重だし、楽しいんでしょうね。これからも、よろしくお願いします。

おばさん社労士 | URL | 2007年02月01日(Thu)21:17 [EDIT]