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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

休業手当について考える

昨日、懇意にしている先輩社労士から「労基法の休業手当と民法536条第2項の関係についてどう思う?私はずっとひっかかってるんだけど・・・」という電話をいただきました。
この先輩は法律をかなり専門的に勉強されたのでいろいろと詳しい方です。いつも教えていただくことも多く、昨日のようにあちらから私に意見を求める場合もあり、私にとってはいつも勉強になる法律談義のできる方です。
労働基準法第26条では、使用者の都合により休業した場合には平均賃金の6割以上の賃金を支払わなければならないと規定されています。
それについては過去記事にしました。(
参照)
一方、前述の民法の規定では、債権者の責任で債務不履行になった場合、債務者は反対給付を受ける権利を失わないとなっています。
過去記事では民法については触れていません。昨日、先輩から聞かれ、私もいろいろ調べたり、その後、先輩と電話でやりとりしたりということをしながら、これは結構奥が深いと思い至りました。

民法の規定に戻りますが、ここでいう債権者とは使用者で、債務者とは労働者です。使用者は労働者を働かす権利のある人、労働者は働く義務のある人です。働かせる方の使用者に責任のあることで労働者が義務を果たせなくなった場合が、使用者の都合による休業です。
労働者に義務を果たす気持ちがあるのに、使用者の都合により果たせなくなった場合は、一般的な債務不履行とは全く違いますから、反対給付=賃金を受ける権利があるという規定です。
即ち、賃金を100%受ける権利があることになり、労基法にある60%との整合性がとれないというのが、冒頭の先輩の疑問です。

民法の規定は当事者間の合意による特約で排除される可能性もあり、特に労働関係においては使用者側が優位になりがちのため、労働者保護のために強行法規(罰則がある労基法)をもって60%を保障したもので、「使用者の責に帰すべき事由」は民法よりももっと広く解釈される。労基法第26条は、民法536条2項を排除するものではないというのが、行政の解釈です。(昭和22.12.15基発第502号)
民法で想定されているのは、債権者(使用者)の故意、過失、または信義則上これと同視すべきものとされていますが、「労基法のそれはもっと広く企業の経営者として不可抗力を主張しえない全ての場合」(東京地決国際産業事件昭25.8.10、ノースウエスト航空事件最判昭62.7.17)との解釈がされていて、両者は異なるものであるとの解釈も成り立つようになりました。

そのように考えると、同じような経営不振による休業でもリーマンショックのような場合と、明らかな放漫経営による場合とでは、前者は60%、後者は民法の規定により100%を請求する余地があるということになると思います。
休業手当=60%と考えていましたが、経営者側の故意又は過失による責任がはっきりとしている場合には、民法の規定により100%を支払うべき場合もあるということだと思います。
いずれにしても、事案ごとに具体的な事情をしっかりと考慮して判断すべきことなんだなと思いました。

〔本日の参考文献〕 厚生労働省労働基準局編「労働基準法上」P359~371
             厚生労働省労働基準局編「労働基準法解釈総覧」P256
                                    河本毅著「労働紛争解決実務講義」P65~67

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