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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる12年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

時効で請求できない未払い賃金を損害賠償請求

懇意にしている社労士仲間と労働時間に関する判例の勉強会を続けています。
昨日は、私が発表の担当でしたが、時効により請求できない期間の未払い残業代を民法709条の一般不法行為による損害賠償請求として認められた珍しい判例を取り上げました。(杉本商事事件一審広島地判平19.3.30、二審広島高判平19.9.4確定労判2008.33)
通常、未払いの残業代など賃金債権の時効は2年ですので、提訴した日から2年間分遡って請求します。
この事件は、さらにその1年前の分(一般不法行為の時効は3年)について、不法行為による損害賠償請求として、一審では棄却されましたが、二審では認められました(同時に請求した慰謝料は認められず)
賃金債権請求権と損害賠償請求権はそれぞれ別個の請求権ですから、法律的な要件を満たせば認められることもあるわけで、この裁判でそれがはっきりしたということだと思いますが、労働時間管理を怠っていた会社に不法行為責任があると認定したわけですから、その意義は大きいと思います。

では、違法とされた会社の労働時間管理とはどのようなものだったのでしょうか。
事件の舞台は精密測定機器、金属工作機械、機械工具等の販売及び輸出入を行っている会社の営業所で、所長以下9~10人ぐらいの規模の事業所です。
訴えた労働者は勤続30年以上で退職前3年近くはこの営業所で内勤業務を担当していました。結果的には、上司とのちょっとした衝突などをきっかけに自己都合退職して、その後①未払い賃金の請求と②付加金の請求、③自己都合退職により減額された退職金の差額、冒頭に書いた④損害賠償請求を要求して提訴したものです。
一審では、①が全額(403万円余り)と②の半額(180万円余り)が認められ、会社も不服申し立てせず、労働者側だけが控訴したため、それらの金額は全額控訴審口頭弁論前に支払い済みとなっています。
二審では、②、③、④について審理され、②については既に未払い賃金が支払い済みのためこれ以上は付加金を課すことはできないとして棄却、③も棄却されたのですが、④については認められ、235万円余りと弁護士費用25万円の支払が命じられたものです。

一審で認められた労働時間の中には始業時刻前の掃除や朝礼、体操などの時間が含まれていますが、このあたりについてはまたの機会に書くとして、違法とされたこの会社の労働時間管理について書きたいと思います。
この会社は、全社員が参加する営業所会議、棚卸し等を除き、通常の時間外勤務については自己啓発や個人都合であるとの解釈で、時間外手当を支払っていませんでした。
そのようないわゆるサービス残業が常態化していて、労働基準局の調査で注意も受けていたようです。
また、労働基準局に指摘されるまで出勤簿もつけていないという極めてずさんな管理を行っていました。
出勤簿をつけ始めてからも所長の指定する時刻を書いたりもしていたようで、労働時間管理の仕方に違法性があるとの判断をされています。
また、社内規定上は申告して残業することになっていますが、営業所という定型的な事務作業ばかりが仕事ではない特殊事情の中では、その運用は問題があると裁判で批判されています。
何故ならば、営業所の場合、取引先の相手方も営業担当者が多く、昼間は連絡がつきにくく、終業時刻後に連絡、折衝を行うということは日常的にあったからです。
そのような場合、業務の見込み時間が読みにくいわけです。
会社としてきちんと残業代を請求できるような制度を整える義務を怠ったとして違法とされています。

709条の構成要件(成立するための条件)はいろいろあり、未払いの残業代があるからといって、すぐに損害賠償請求権があるとはいえませんが、会社としてはこのような先例がでたわけですから、さらに労働時間管理についてしっかりと義務を果たさなければならないでしょう。
やるべきことさえやっていれば、どこで何を言われたとしても恐くはないのです。
労働時間管理懈怠は違法行為で損害賠償責任があるとの結論が出た珍しい裁判でした。

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