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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

能力不足で辞めてほしい場合

昨年、就業規則を作成して届出た後、他の社内規程が必要になり現在作成中のある会社から、中途採用した勤続1年の事務職の社員について、能力不足なので辞めてもらいたいけれど、そう簡単ではないですよねという電話をいただきました。
今までに何度か本人とは話し合い、部署も異動させたりして会社としてはできることをやっているという話です。
「そのつど記録はとっていますね?」とお尋ねすると、「いやーっ、とってないです」
うーん、それはまずいですね。指導、教育についての記録は絶対必要です。
私の作った就業規則には当然能力不足の場合も解雇できることにはなっていますから、解雇が全くできないわけではありません。
でも、能力不足というのは客観的な基準を示すことが結構難しいので、ハードルは高くなります。なんてことを話しつつ、作成中の規程についても最後の詰めをすることになっていたので、じゃ、今度伺ったときにゆっくりお話しましょうということで、訪問日を決めました。

解雇というのは、労働契約において、使用者側が一方的に契約を解除することです。労働者側が自己都合で一方的に退職できることといっしょで、民法上は期間の定めのない契約であれば、特に理由の制限はなくできることになっています。
しかし、労働法上では厳しく制限をしています。解雇をするためには「客観的に合理的で社会通念上相当」な理由が必要です。使用者と労働者ではやはり労働者が弱い立場にあるという前提で労働法が成り立っているからです。
また、解雇理由については就業規則に必ず記載すべき事項で、限定的にきちんと列挙されていなければなりません。
私の作る就業規則の場合、「特定の能力や技術、成績を条件として雇入れられた者にもかかわらず、能力及び適格性が欠けると認められるとき」などという条項を挙げます。
この条項があることにより、能力を期待して中途採用したのに期待に反しているときには、手順を踏む必要はありますが、解雇が可能となります。

というような就業規則上の条件は整っているものとして、能力不足と思われる人に辞めてもらうにはどのような手順が必要でしょうか。
この点について、即戦力を期待して地位を特定して待遇なども良い場合は、比較的簡単に解雇できると考えられています。(フォード自動車事件 東京高裁判昭59.3.30労判437-41)他方、中途採用であっても特に厚遇しているわけではないというような場合には、会社に対してきめ細かい指導・教育、部署を変える等の努力が求められます。
「会社が求める能力や適格性について平均に達することを期待することが極めて困難」として解雇を認めた判例でも、使用者が職務変更を労働者に提案して交渉を重ねたなどの会社側の努力について考慮されています。(プラウドフッドジャパン事件東京地判平12.4.26労判789-21)
会社として、雇用維持の努力はしたがどうしようもなかったというときに、ハードルを超えることができると考えられます。
ですから、指導・教育についての記録(繰り返し、丁寧にしているという証拠)、可能なら部署を変えるなどについては、必須条件ということになってきます。

そんな相談を受けるのはあまりうれしくはありませんが、とりあえずは話を聞いてみないとわかりません。
4月から月に2度ほど行っている全国社会保険労務士会連合会での電話相談でも、労働者側からその種の相談を受けることがあります。
「あなたの全ての能力が否定されたなんて思わないことです。その職場と相性が悪かったぐらいに考えたらいかがでしょうか」なんて言っている私が、今度は逆の立場の人の相談を受けるのですから何だか複雑な心境です。

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