
米国務省の要職を辞して、現在はプリンストン大学教授のいわばエリート女性ですが、「なぜ女性はすべてを手に入れられないのか」という題の論文を発表して、全米で論争となっているという記事です。
著者のアンマリー・スローター教授は、2009年1月から11年1月までヒラリー国務長官を補佐する外交の頭脳である政策企画長を務めていましたが、当時14歳の長男が中学校で授業を妨害するなどの問題行動を起したため、子育てのために職を辞したそうです。
辞した職は彼女の目標とするものでしたが、プロとして振舞うか、子どもを守るか二者択一を迫られ耐え難かったそうです。
これからの若い世代のために真実を打ち明けるために論文を書いたとありました。
「どうやって仕事と家庭を両立させていますか」と男性に聞く人はいません。
彼女は、なぜ女性が男性と同じ選択肢をもてないのか、女性は個々の能力に関係なく大変な努力を迫られると語っています。
以前読んだ本では、女性の社会進出が進んだ国ほど少子化の問題は少なくなるとありました。子育てにはある程度のお金が必要ですし、二人で働いてカバーできるカップルほど子どもを持ちやすい。日本の男性の「草食化」がいけないという説があるが、そんなことのないイタリアや韓国でも少子化が進んでいることからも「草食化」は原因でないとわかる。日本を含めてイタリア、韓国ともに先進国では女性の社会進出が遅れている国だというわけです。
女性の社会進出が進んでいると思われる米国でも、そんな今さら感のあることが論争となるんですね。
スローター教授は記者のインタビューに答えて、女性の長い一生で子育ては25年ほどなので、20代にキャリアの基礎を築きいったん子育てをして、再び復職する選択肢もあると語っています。60代、70代でも現役で働くことが前提です。そのあたりは、私も共感できます。
子育てでは仕事で得られないものが得られると思いますから、多くの人(男女ともに)がそれを経験することにより、社会全体にとってプラスになると思います。
問題は、男性はそんなことで悩まないのになぜ女性だけが悩まなければならないのかということなのでしょう。
教授は35歳までにキャリアを中断できない場合は、卵子凍結を考えた方がいいとも語っていて、そのあたりは個人的な倫理観の問題もからんできますので、私としてはちょっと考えてしまいますが、いったん、職を辞した女性の復職が簡単に認められれば、キャリアの中断ということを考える人も増えると思います。
それらの社会的システムは、日本などでも確立されていません。
さらに、以上は、根本的な解決ではなく、一種の革命が起こらない限り現状は変わらないとも語っています。革命とは、男女とも好きな時間に働くことができて、今より労働時間が短くなっても生産性が増すような職場を構築することだとしています。
IT化とグローバル化をてこにすれば可能なのではないかとのことでした。
確かに、できそうな気もしますが、変わることが嫌いというか、苦手というか、そういうこの国では本当に革命を起さない限り難しいかもしれないなと思うのでした。


