
ざっと見て興味のある記事だけ読むのですが、今月号に、保険者の不適切な説明により不支給にされた出産手当金について、不支給は不当だとした社会保険審査会の裁決事例があり、目をひかれました。
出産手当金とは、健康保険に加入している被保険者が労基法にある産前・産後休業をしたときに支給される給付金です。
仕事を休み、給料が受けられないとき1日につき標準報酬日額の3分の2が支給されます。(給料が出ても出産手当金より少なければ差額を支給)
退職後も退職日まで継続して1年以上被保険者であり、退職日に出産手当金を受けていたか、受けられる状態(有給休暇などのため出産手当金がストップしていた場合など)であったことを条件として受給できます。(全国健康保険協会HP参照)
出産手当金は休業して給料がもらえないというのが支給要件ですから、退職日に受けていたか受けられる状態というためには、退職日には仕事を休んでいることが絶対条件です。
前述のHPには、わざわざ赤文字※でそれが書かれています。
さて、冒頭の会報の記事によると、その件について社会保険事務所(平成20年の裁決のため政府管掌の健康保険であった)に問い合わせした本事例の会社に対して、担当者が、
退職日に休んでいないとだめだという肝心なことを全く説明せず、1年以上被保険者期間があり、産前期間に退職してもその期間に在籍さえしていれば支給されるという説明をしたそうです。そのため、退職日がちょうど会社の繁忙期だったため本人が上司と相談して、有給休暇を取得せずに出勤しました。それが理由で退職後の出産手当金が不支給となったそうで、それに対する不服申し立てが認められたものです。
行政の担当部署に問い合わせをして説明を受けて、そのとおりに行動したのに不支給とは納得いかないということですね。
裁決では、行政の誤った説明により支給を受けられないという損失の負担を、本人に負わせるのは信義則上認められないとしています。
誤った説明の責任は本人にはないという常識的な判断だと思います。
このような場合、言った、言わないの世界になりがちですが、出産手当金の場合、退職日に休むという条件がわかっていれば、本人が出勤するというような行動をとることはあり得ず、間違った説明を受けたということに信憑性があると判断をしたようです。
現在では、社会保険庁の解体により、全国健康保険協会という民間の組織となり、ホームページなどもとてもわかりやすくなっていますので、被保険者の皆様はまずそれらを参照していただき、わからない場合は、各都道府県の社会保険労務士会でも予約による無料相談を受け付けていますのでご利用になるとよいと思います。


