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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

パソコンのログデータで労働時間算定

PE&HR事件(東京地裁判平18.11.10労判931-65)という判例があります。個人的な勉強会で取り上げたのですが、今日的で面白いなと思ったのでちょっとご紹介したいと思います。
タイムカードのない会社で、労働時間を算定するのに、通常あるような出勤簿や日報などの日々の記録もなかった会社が、パソコンのログイン、ログアウトの記録を提出して、裁判所も客観的な記録として評価できるとした事例です。

[事件の概要]
原告花子さんは、2005年(平成17年)2月初めインターネットの採用情報に応募して2回の面接の後、被告H社に4月1日から「パートナー」として採用され、経理・労務などを担当することになりました。
H社はベンチャー企業に対する投資や経営コンサルタントなどを事業としている会社で、社員というような人たちは皆「パートナー」と呼ばれ、それぞれいくつかの部門を一人または複数人で割り振られて担当させられ、特に部下はいませんでした。
全体で7、8人で就業規則もありませんでした。(労働者10人以上に作成義務があるので、なくても違法ではない)
8月末ごろからH社の代表者は、「泥棒」、「人間として最低」などの暴言を花子さんに浴びせるようになり、体調をくずした花子さんは9月末日で退職して、その後、在職中の未払い賃金並びに暴言により体調をくずしたことの慰謝料、損害賠償などを求めて提訴しました。

H社は、花子さんについて「パートナー」という経営者と一体となる立場の人で、労働基準法41条にある管理・監督者にあたるとして、残業代を一切支払っていなかったのですが、花子さんの待遇、業務の責任と権限、労働時間管理の実態について、管理監督者ではないと裁判所に判断されています。
従って、労働時間をきちんと算定して、法定労働時間を超えた分については割増賃金を支払うことになります。
花子さんは会社が労働時間管理を全くしていないことを不審に思い、自分の手帳に時間をつけていたので、それを証拠として出しましたが、手帳というのはどうしても客観的証拠とはなかなかみられません。本人の主観により書く余地が残されてしまうからです。
一方、H社側はパソコンのログイン、ログアウトの記録を提出して、裁判所はこれを客観的な証拠として採用しています。
「デスクワークをする人間がパソコンの立ち上げ、立ち下げをする時刻は出勤、退勤の時刻前後と経験的に推認できる。他に客観的な資料がない場合は、当該記録を参照するのが相当」と判断しています。

パソコンのログデータは改ざんの余地がありますが、それも検討のうえ、記録をみて特に不自然なところはないとして改ざんしていないと判断しています。
ログデータが不十分な場合は、セキュリティソフトのデータを使い、その時間は原告が会社にいたと推認できるとしています。
それでも、足りない部分については原告の手帳により補完して多少の公平性にも配慮しています。
結果的にわずか半年間でしたが、111万円余りの未払い賃金があるとの判決が出て(請求額は160万円余り)、同額の付加金も認められました。
暴言についての慰謝料その他は認められませんでした。

労働時間について裁判になりますと、まず、客観的な証拠としてタイムカードですが、タイムカードと労働時間がきっちりかっちり一致しない場合も多いので、ある程度信用できるかどうか補完的に他の証拠を見る場合があります。
今後は、パソコンのログデータなども証拠となる可能性がありますから、パソコン使用についても業務に関係のない使用はしないなど、管理をきちんとしていく必要があると感じた判例でした。


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