
なんか明るいニュースってないかなあと朝刊を見ていたら、キャノンの工場で働く方が国会(衆議院予算委員会公聴会)で「偽装請負」の実態を証言するというニュースがありました。
けして明るいニュースではないのですが、そういう状態で声を上げるのは勇気がいると思うので頑張ってほしいと思いました。当ブログでも何度か関連の記事を書いていますが、(参照) 経団連会長を擁するキャノンで働く方が証言するという意味は大きいと思います。
この方についてキャノンは偽装請負を否定していると新聞記事にはありますが、報道されている内容を見る限り典型的な偽装請負ですね。
記事にあるO氏は、2000年4月キャノンの工場で働き始めます。雇用主は請負会社ですが、キャノンの正社員に手ほどきを受け、超高精度のレンズを作ってきました。当時は派遣を請負と偽る「偽装請負」を知らず、その違法性もわからなかったそうです。しかし、昨年その違法性を知り、労働局に内部告発しました。昨年12月にはユニオンを結成し、支部長となりました。
キャノンは偽装請負を否定し団体交渉を拒否しています。「貴組合員は請負会社の従業員として当該業務に従事しているにすぎない」というのがキャノンの言い分だそうです。
O氏は「キャノンが好きだし、ここで今後も働きたい」と語っています。多分、超高精度のレンズを作るという仕事に誇りと愛着を持っているのでしょう。7年も続けてきたのですから、相当熟練してスキルもアップしていることと思います。何故そういう人を正社員として登用しないのか不思議ですね。
「偽装請負」を否定しているそうですが、正社員に手ほどきを受けた段階で請負の働き方ではないですね。行った先の工場で独立した別会社の社員としていっさいの指示命令を受けずに働くのが「請負」です。行った先の会社の社員の指示命令を受けて働けば、それは「派遣」です。製造業の「派遣」なら同一業務に1年間しか派遣できません。それを超える場合は派遣先会社は雇用の申し込み義務が発生します。
だいたい、製造業に派遣が認められるようになったのは2004年の派遣法の改正からです。2000年からそんなことをしていたとしたらそれも問題ですよね。
「グローバルな競争に勝つためには人件費の抑制が重要」と毎度毎度聞かされるのですが、競争に勝って企業が儲かってもそれで不幸になる人が大量に出てしまったら、そんな国はすばらしい国と言えるのでしょうか。
「労働する」というのは人間にとって生活の糧を得るだけのものではありません。自己実現をするとともになんらかの喜びを見出していくものだと思います。それには現実の労働に見合った処遇が欠かせません。低賃金でいいように利用されるような働き方が続けば、せっかくの「労働」は食べるためのみが目的のものになってしまうのです。
生きることと労働することはセットだと思います。労働する喜びを得られないような大量な労働者のいる国がいい国でしょうか。社会全体でもっともっと考えるべき問題だと思います。
多分、O氏にはいろいろな圧力がかかっているかもしれませんが、めげずに粘り強く交渉を続けていっていただきたいと思います。


