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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

判例にみる事業主の届出義務

連合会から毎月「月刊社会保険労務士」という小冊子が送られてきます。


連合会や関係行政官庁の動き、会員の寄稿、ソフトや書籍の宣伝などで構成されています。その中の会員が寄稿した原稿で、ある判例について言及したものがありました。私はその判例を知らなかったし、興味深い内容なのでちょっと書いてみようと思います。


「京都市役所非常勤嘱託員厚生年金保険事件(京都地裁、平成11年9月30日判決)」 という判例です。事業主が届出義務を怠ったため、厚生年金被保険者となることができず、こうむった損害について損害賠償を認めたものです。

厚生年金法第6条にあるように国、地方公共団体も適用事業所です。共済組合の組合員等に該当する公務員を除き、要件をクリアーすれば被保険者となり、事業主には届出義務が発生します。


この原告の場合は非常勤ではあっても、労働時間その他から被保険者資格を取得するべきであったとして、損害を認めその7割について賠償を命じました。


残る3割は誰のせい? なんと確認をしなかった原告本人に3割の過失ありとしたのでした。確認請求や権利の保全のために何らかの行動にでなかったというのが理由です。


先の冊子に投稿した会員の方は、確認請求は義務ではなく権利であり、現実にはほとんどなされていないという実態があり、誤った法の解釈であると批判されていました。


それでも、過去の判例では、確認請求していればそのような損害はなかったとして、事業主の責任を100%否定したもの(角兵衛寿司事件大阪地裁判決平成元年8.22)もありますので、それに比べれば随分労働者側に有利に見てくれたわけです。


裁判官というのは、一般の人がいかに法的な権利とか義務とかにうといかということについて、いまいちわかっていないのかもしれません。「自分の権利は自分で守りなさいよ」と言いたいのでしょうが、そうできない人もたくさんいるのですから、事業主の良識に期待するしかないですよね。


この判決では事業主について「被保険者資格の有無について疑義があれば、届出をしておくべき」とか「届出を怠ることによって被用者が厚生年金に加入する権利を侵害する結果とならないように注意すべき義務があるというべき」として事業主責任を重く認定しています。


届出から年金受給資格を得るまで長い期間かかりますが、この判例では、その間の除斥期間(注1)も老齢年金の請求権が発生した時点からとして、本来もらえるべきだった年金額に見合う損害を認めています。


注1.除斥期間 一定の権利について法律の定めた存続期間、時効と似ているが、当事者が援用しなくても一定期間が過ぎれば権利が消滅する。


事業主は、人を雇った際の責任として届出をきちんとするということが大切だと思います。労働者側もおかしいと思ったら確認するということですね。保険料納付の時効は2年ですから、長い期間あいてしまうと2年分しか遡って納めることができないので、注意が必要です。


なお、前述の会員の方は判決の中で、この事件で弁護士とともに尽力した社労士の費用が損害金として認められなかったのは残念だと書かれています。裁判官が社労士制度や年金制度について理解が足りないとも嘆いていらっしゃいました。


業界全体でアピールしていくべき問題だと思いました。

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コメント


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今の時代は何に関しても自分の事は自分で管理確認していないといけないだなって感じています。
「自己責任」の時代なんですね。でも、それならそうともっと早くから頻繁に周知活動に取り組んでくれよと理不尽さを感じます。その時になって初めて分かることが多々あります。
まあ、それを含めて自己責任なんでしょうね。

しろたぬき | URL | 2007年02月24日(Sat)08:39 [EDIT]


しろたぬきさん
こんにちわ。

おっしゃるとおりですね。「自己責任」を言うのであれば、全ての情報が平等に公開されていることが原則ですよね。

寄稿されていた方は東京会所属の方でしたが、一般の方は「確認請求」などほとんど知らないし理解していないと書いています。

たとえ、情報が公開されたとしても様々な理由で「情報弱者」になる人がいると思います。弱者に優しい社会であってほしいと思いますが、年々そうでなくなるようで残念です。

おばさん社労士 | URL | 2007年02月24日(Sat)13:58 [EDIT]