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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

県の研修会(2) 能力不足の社員に対する退職勧奨

県会の研修会での事例研究発表の続きです。


退職や解雇についての相談は年金・社会保険に次いで相談件数が多いということで、以下の事例について発表されました。


建設会社の営業社員が最近1年間の営業成績の不振を理由に退職の勧奨を受けました。従わない場合は解雇も辞さないとの通告を受けます。この社員は3年ぐらい前までは成績もよかったため、「成績が悪いのは業界の環境変化や受け持ち地域に問題があり、自分だけの責任ではない」と主張しています。

昨日いただいた資料の中には、能力不足のために解雇された社員が解雇の効力を争って仮処分を申請した裁判の例が挙げられていました。(セガ・エンタープライゼス事件 東京地裁決定 平成11.10.15)


決定では、就業規則の「労働能力が劣り、向上の見込みがない」との項目で解雇になったことについて、「平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがない時でなければならない」としています。


また、会社は教育、指導により労働能力を向上させる余地もあったとして、雇用関係を維持しようとする努力がみられないとして解雇を無効としました。能力評価が妥当かどうかに加え、会社が能力向上のために何をしたかも厳しく問われたのです。


類似のものとして、社員の成績不振は会社自体の業績不振や配置のあり方等の事情があること、いきなり解雇ではなく降格もあり得たなどとした判例(森下仁丹事件 大阪地裁判決 平成14.3.22)もあります。


一方、解雇を認めた判例では使用者が教育訓練や配置転換等によって解雇回避の努力をしてもなお労働者の能力や適格性に重大な問題がある場合、(三井リース事件東京地裁決定 平成6.11.10)、高度な能力を期待されて中途採用された労働者の場合は、使用者側の解雇回避義務が軽減されるとする事案(フォード自動車事件 東京高裁判決昭和59.3.30)などがあります。


以上のことから就業規則上「勤務成績が著しく不良なときは普通解雇する」などとあっても、権利の濫用とみなされるおそれもありますので、会社側は慎重に判断することが求められます。厚生労働省では、「勤務成績または業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたとき」というような内容の就業規則を推奨しています。


判例では、特に新規採用した社員について、会社は「必要とされる能力を有する」として採用したのだから、そのリスクを負うべきという立場のようです。中途採用については幾分判断基準がゆるやかなように見受けられます。


いずれにしても、解雇という労働者の生活を大きく脅かすようなことについての判断は、極めて慎重に行うべきということになるでしょう。


相談事例にあるような退職勧奨などについても、労使で争いになった場合、会社側は相当不利な立場になることは間違いないと思います。日ごろから社員の教育訓練や指導に努力して、社員の力を最大限発揮できるような環境作りが大切だと思います。

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