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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

うつ病が業務災害になった場合

昨日、個人的な勉強会である判例(東芝(うつ病・解雇)事件東京高裁判平23.2.23)を勉強しました。
うつ病になり休職し、休職期間が満了しても復職できなかった社員を規程どおり解雇とした会社に対して、労働者側が解雇無効を訴えた事件です。
一審の東京地裁では労働者側の言い分がほぼ認められますが、一部について不服として労使双方が控訴した結果がこの高裁判決です。
大筋の考え方では地裁の判断と同様ですが、一部修正しています。
うつ病になった社員について休職期間が満了しても復職できない場合、多くの会社では、自動退職または解雇というような規定になっていると思います。
この事例も、会社としては就業規則どおりの対応をしたものですが、ひとたび、うつ病の原因が業務に起因するとされると、簡単には解雇、退職というわけにはいかなくなります。

労働基準法19条第1項では、労働者が業務上のけがや病気になった場合、その療養期間中とその後30日間は解雇してはいけないと規定しています。
ただし、重い病気の場合はいつまでも解雇できないような事態になりますから、3年たって平均賃金の1200日分の「打ち切り補償」を支払うか、その時点で労災保険の傷病補償年金を受けているか受けられる場合は、解雇してもよいということになっています。
昨日、勉強したこの事件では、労働者側がうつ病になったのは、過重労働が原因で会社に責任があるとされ、業務上の疾病と認められています。
従って、会社側の行った解雇措置は無効となり、労働者は「雇用契約上の権利」があることになり、解雇された日から判決の日までの賃金支払いが命じられています。

裁判で認められた法定時間外労働時間は、うつ病になったと思われる時期の前6か月間の平均が約70時間です。他の事例に比べるとけして多くはないと思いますが、プロジェクトのリーダーを任され、次々とトラブルが発生する中で日程にも余裕がなかったという事情があり、労働の質という点を重くみています。
本人、家族ともその種の病気のり患がなく、業務との因果関係しか原因は考えられないという判断をしています。
また、「平均的な労働者」について、ある程度の幅があるので最も脆弱である者を基準とすべきであるとしています。
たくさんいる労働者の中で、最もストレスに弱い人を基準として安全配慮義務を履行しろということですから、このあたり企業側には厳しい判断だと思います。

この事件の特徴は、うつ病になったことについて会社側に責任があるのだから、休職期間中の賃金を支払いなさいとしたことです。
これは労働者側の請求が認められたものですが、民法536条第2項により債権者の責任により債務を履行できなくなったときは、債務者は反対給付を受ける権利があるとする規定に基づいています。即ち、労働者が労務提供できなくなったことについて、会社に責任があるのだから、労働者は賃金をもらう権利を失わないというわけで、休職期間中の賃金(休職前の年収から賞与と残業代をひいて計算)を全額払うよう命じています。
労働者側は、最初労基署に労災申請をして認められず、この高裁判決が出る前に別途裁判で労災が認められていて、高裁判決のときには労災の給付金を受けています。
そのほかに最初は健康保険組合から傷病手当金も受けていますが、それらについては、不当利得としてそれぞれで精算するもので、とりあえず賃金は全額支払うようにとの判決が出ていて、労働基準法にある賃金全額払いの原則を貫いています。

いろいろな点で興味深い判例ですが、労働者のメンタルヘルスケアについて、会社の責任が非常に重くとらえられている事例だと思います。時代の流れのようなものを感じる判決だと思います。
うつ病になった社員がいた場合、会社としては、長時間労働がなかったか、パワハラ、セクハラ、いじめ、嫌がらせはなかったかなどはきちんと調査して、原因を把握しておく必要があるでしょう。裁判所で公開している高裁の裁判記録はこちらで読むことができます。(
参照)



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