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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

募集したときと違う労働条件は違法?

2014-お正月 ② 当地は年末から年始にかけて穏やかな晴天が続きました。
いつもどおり家族が集まりいつもの神社に初詣に出かけ、いつもどおり飲んでしゃべって楽しく過ごしました。
ほぼ1週間の間、メールチェックや年賀状チェックで時々事務所には出ていましたが、仕事らしい仕事は一切していないので、今日からまた頑張らなくてはと思っています。
写真は事務所に飾ったお正月の花です。
さて、年末にちょっと気になる裁判のニュースがありました。

東京のタクシー会社の運転手さん40人余りが、ハローワークで求人に応募したときに聞いていた労働条件と実際に働いてからの労働条件が大きく違うため、訴訟を提起したというものです。
求人票では月額固定給35万円だったのが、実際には公休日8~9日出勤しても20万ぐらいにしかならず、おまけに車の点検や清掃等の時間がかかり1日2~3時間の時間外労働があるのに賃金が支払われていない、それらの未払賃金の支払いを求めているそうです。
一方、会社側の言い分としては、35万円の中には公休日も出勤した場合その他の手当がすべて含まれるとしています。

こういう話は額の多少はあるでしょうが、比較的ある話だと思います。
リーディングケースの裁判例の考え方としては、
求人票に記載された賃金見込み額は確定的なものではないが、社会常識に照らして著しく下回ることは許されない。(八州事件東京高裁判昭58.12.19労判421-33)
求人票に記載されていた賃金と実際に受け取った賃金の差額を要求した労働者の請求を斥けた裁判例です。
求人票に記載された基本給額はあくまでも「見込み額」であり、入社時までに確定されることが予定された目標の額で相違してもやむを得ない。
しかし、応募者は見込み額を信じて応募しているのだから、見込み額を著しく下回る額で賃金を確定すべきではない。としています。裁判例では大きな差がなかったとして「信義誠実の原則」(民法第1条第2項)に違反しないとして労働者側の訴えを棄却しています。

求人票に書かれている内容はあくまでも「見込み額」だとする考え方で、この裁判例のように新卒採用の場合には特に採用決定から実際に働き出すまでに間がある場合には、ある程度の変動は仕方ないと考えているようです。
では、中途採用の場合はどうでしょうか。
「月給162,000円~350,000円」という求人広告に応募したのに実際には月額120,000円しか得られなかったとして労働者が訴えた事例も、請求を斥けています。
労働者側は、採用時に賃金の説明がなかったのだから、募集したときの賃金を払わないとおかしいと主張したようですが、中途採用者の場合には能力、年齢等に幅があり、他の労働条件とともに入社時に説明を受けているはずで、賃金の説明だけなかったとするのは不自然だという理由からです。(ファースト事件大阪地判平9.5.30労判738-91)
採用時には労働条件を書面で明示することが労基法で決まっていますから、もし、採用時に明示しない場合には、募集時の労働条件を互いに認めていると考えられても仕方ないので、この裁判のような主張が出てくるわけです。

求人広告は個別的な雇用契約の申込みの意思表示とみることはできないとするのが裁判所の考え方ですが、求人広告、社内説明で誤解を招くような説明をした会社に対しては、慰謝料100万円を命じた事例もあります。(日新火災海上保険事件東京高判平12.4.19労判787-35)
会社としては、多少の違いは許されるし、募集時の内容は確定的なものではないと主張することはできますが、著しく違う場合や、労働者側が信じ込むような誤解を招くような説明をしていた場合は信義則違反を問われるということになるのだと思います。

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