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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる12年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

マタハラ裁判に考える

男女雇用機会均等法では、婚姻、妊娠、出産を理由とする不利益な取り扱いを禁止しています。(第9条)どういうことが不利益取り扱いになるかということについて告示(指針)が出ています。(平成18年10月11日 厚生労働省告示第614号)
解雇、雇止め(有期契約で期間満了後契約更新しないこと)、退職または、雇用形態の変更(正社員からパートタイマーになど)の強要、降格、減給、不利益な賞与査定、派遣社員について役務の提供を拒む(別の人に替えてほしいなどということ)、「就業環境を害すること」というのもありますから、嫌味を言ったり、嫌がらせをするなどということも含まれます。
しかし、以上のことは日常的に行われているというのは、私も、以前、全国社会保険労務士会連合会の労働者向けの相談を受けたとき(
参照)実感として感じていました。
最近では「マタニティハラスメント」なる言葉も出てきて、社会の関心も高まってきた中、昨日、関連する最高裁判決があり、妊娠により降格させられたことは違法であると判断して、人事の裁量の範囲と判断していた高裁に差し戻しとなりました。

降格には、労働者側の何等かの失態に対して行われる懲戒処分としての降格と、人事上の裁量の範囲で行われる降格がありますが、人事の裁量権については、判例でも比較的企業側の強い権利として認められています。労働者を適正に配置することができなければ、企業運営に支障をきたしますし、労働契約に付随して使用者に与えられる権利と考えられているからです。
今般の裁判でも、一審、二審ともに「人事の裁量」として労働者側の「妊娠したことにより降格を余儀なくされた」という訴えを退けています。
最高裁は、案外、時の政府の政策や世論を鑑みながら判決を下しているのではないかとの感じがすることがありますから(あくまでも私的感想です)、今回は多分、一審、二審の「人事の裁量の範囲」という判断をくつがえして、労働者側の言い分を認めるのではないかと思っていました。

裁判官が依拠するものは法律であり、過去の最高裁判例ですが、マタニティハラスメントについては判例がなく、男女雇用機会均等法を根拠とすることになると思います。
妊娠による不利益取り扱いが違法になる以上、人事の裁量権にあたるかどうかがポイントになるのだと思いますが、最高裁では、労働者側の自由な意思に基づく同意がなかったこと、円滑な業務運営や人員の適性配置に支障が出る「特段の事情」があったかどうかの審理が尽くされていないとして、高裁に差し戻したと報道されています。
一審、二審では「女性の同意を得ているとして人事上の裁量権を認めましたが、最高裁では「電話一本で降格を告げられただけで納得していない」という主張を重く見たようです。労働条件の変更については、労働者の同意が必要だという労働契約法の規定もあるので、そのあたりも企業が留意すべき点です。

報道によると、この女性労働者は理学療法士で病院勤務ですが、妊娠を理由として軽易な業務への転換を希望して(労働基準法で認められている女性労働者の権利)業務を変更するときに、副主任の肩書を外され、副主任手当9,500円が支給されなくなった、ということについて均等法違反を訴えたようです。
あくまでも想像ですが、会社側の言い分としては新たな軽易な業務は副主任にふさわしい仕事ではなく、副主任の肩書を必要としないからというようなところではないかと思います。
しかし、女性側は法律にある正当な権利を行使しただけで何の落ち度もないわけですし、いったん得た社内での肩書を何故外されなくてはいけないのか、しかも、手当が支給されなくなり給料も減るという状況には納得いかないということだと思います。

企業側に立って考えると、なかなか難しい問題です。「副主任」というのは、それだけの責任と権限があるから手当も出す、「軽易な業務」に変更した場合、同様の責任と権限があるのかというと、そうではないとなった場合に仕事に見合った適正な賃金を支払うというところでどうなのだろうということになるからです。
裁判所では「特段の事情」と「労働者の自由意思による同意」を求めています。
仕事の内容とそれに伴う責任と権限に著しい(ちょっとやそっとの違いではだめだと思う)の違いが明確に示すことができれば、「特段の事情」と言えるのでしょうか。
元の仕事に戻ったら必ず元の役職に戻すという確約をして労働者に丁寧な説明をしたら、どうだったんだろうか。
まあ、そんな、めんどくさいことはぬきにして、「妊娠したの?良かったねー。おめでとう。身体を大事にね。新しい仕事は今までより責任がないし、楽ちんだけど、役職はそのままで手当もそのまま。お祝いだと思ってね。」
なんて経営者だったら、労働者側は「いい会社でよかった。これからもここで頑張ろう」となったのかなとか、しかし、企業は利潤をあげなければならない、長期的にみれば、後者の方が利潤が上がると私は思いますが、目先の利益を求める経営者も多い。
そうなると、困るのは、「やっぱ、妊娠しそうな女性労働者はリスクだ。雇うのやめとこうか」となることです。当ブログで度々書いていますが、妊娠するって素晴らしいこと、あなたも私もお母さんが妊娠して産まれてきました。人としての当たり前のことが祝福されて迎えられる企業であってほしい、、
いろいろ考えた裁判のニュースでした。

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