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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

複雑な思いのするニュース 赤ちゃんポスト

赤ちゃんポスト(参照)が許可されたという報道がありました。病院から出されていた許可申請を熊本市が許可したというものです。


この制度について、私は賛成とも反対ともいえないのです。いろいろなことについていつも自分の考えを持とうとしているのですが、この件については複雑です。


病院側が少しでも命を助けたいという善意で行うということはわかりますが、簡単に赤ちゃんを捨てるようなことをしていいの?という思いも否定できません。かと言ってこれで助かる赤ちゃんがいるのならOKなんだろうか。とも思ってしまいます。

ドイツなどでは、キリスト教系の団体を中心に数年前から行われているそうで、今回の申請もそれに倣ったもののようです。「赤ちゃんポスト」などというと何やらかわいらしく聞こえますが、結局は「赤ちゃん遺棄箱」なのですよね。


刑法218条(注1)にある保護責任者遺棄罪との関係について、法務省刑事局は「具体的な事例をみないとわからない」としているそうです。


注1.刑法218条 老年者、幼年者、身体障害者、又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。


大学で勉強した刑法を思い出しつつ判例集など見てみました。


リーディングケースとなる最高裁の判例(昭和34.7.2第二小法廷判決)があります。被告人はわき見運転で横断中の歩行者に約3ヶ月の入院加療を要するけがを負わせましたが、適切な処置をとることなく、いったん車に乗せ、他所(降雪中の薄暗い車道上)に放置して立ち去りました。そのため、業務上過失傷害罪と保護責任者遺棄罪の併合罪となりました。保護責任者遺棄罪の根拠はないとして上告していたものですが、棄却されました。


判決では、歩行者にけがを負わせた自動車の運転者は、「病者を保護するべき責任ある者にあたる」としたのです。他の判例でも、保護責任者とは保護すべき法律上の義務を負う者であり、義務の根拠として法令、契約、事務管理の他慣習、条理によるものまで広く解釈しています。


また、「遺棄」とは場所的な観念であり、危険な場所に連れて行ったり、置き去りにしたりすることを言います。他人にけがを負わせ現場から立ち去るという単純なひき逃げ事件の場合は、道路交通法上の救護義務違反に問われるのみで、保護責任者遺棄罪にはしていないと解説にあります。遺棄についても作為と不作為と両方あり、ちょっと複雑になってしまうので、これ以上はふれないことにします。


赤ちゃんポストの場合は、赤ちゃんをおけばすぐ保護されるようなしくみになっているらしいので、危険な場所に放置するというのとはちょっと違いますね。赤ちゃんを置くのはたいてい母親だと思いますから、法律上の保護責任者にあたることは間違いないですが、「遺棄」の点で保護責任者遺棄罪は免れるのではないでしょうか。


だからといって、全面的に「これでいいのだ」という気分にはなれないんですよね。


私の経験上、幼児期はどの子もパパやママが大好きです(たとえどんな親でも)。パパやママにも自分を好きになってほしいと思っているし、いつも見ててほしいし、一緒にいたいと思っています。


そんな子供の願いを踏みにじってでも、赤ちゃんを捨てるのかしら。望まない妊娠だから?何かの事情で育てられないから?


子供が大きくなった時、自分は赤ちゃんポストに入れられていたなんて知ったらどう思うのでしょうか。赤ちゃんを「捨てちゃいたい」と思う前に親子がいっしょに生活できるように、社会全体でなんとかして支えてあげられるようなシステムができたらいいのになあと思います。


なんて書いていると、あたしはやっぱり赤ちゃんボストに反対なのかしらね。うーん、結論を出すのは簡単ではないです。


〔今日の参考文献〕 別冊ジュリスト№143 刑法判例百選ⅡP20~21

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