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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

残業代0法案がいよいよ提出?

働いた時間ではなく成果で賃金を支払うとするいわゆる「残業代0」法案がいよいよ通常国会に提出されるということが報道されています。
現在、類似のもので認められている裁量労働制には、業種が決められている専門業務型裁量労働制と業務内容により認められている企画業務型裁量労働制があります。
それぞれ労使協定や労使委員会での決議など、労使で対象者や労働時間、健康、福祉に関する措置などについて話し合い決めて労働基準監督署に届け出をします。
前者の業種は、新商品の開発、大学などの研究職、出版・放送・広告・映画業界などの限られた業種、証券アナリスト、公認会計士、弁護士などでいずれも専門職です。
後者は事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務で、仕事について労働者側にかなりの裁量がある場合に採用できます。
これらについても、法定労働時間を超えた分に残業代は発生しますが、1の部分は基本給に含まれていると考えるため、0.25(休日は0.35)ですみます。

例えば、専門業務型裁量労働制で労使で話し合ってこの業務には1日9時間必要だから、1日9時間と決めたとします。少なく働いても多く働いても1日9時間働いたとみなすわけですが、法定労働時間は1日8時間ですから、常に1時間法定労働時間を超えています。
ですから、1日1時間の割増賃金が必要です。しかし、もともと、1日9時間と決めてそれに対する給料は基本給プラス手当ですでに支払っていると考えますから、給料を時給換算したもの(年間総みなし労働時間を12で割って月平均の勤務時間を出し、月給+手当をその時間数で割る)に0.25をかければよいということになります。
普通の労働者に比べるとかなり残業代は少なくてすむということになります。

しかし、これらの制度は、残業代を節約するための制度ではなく、その業務の性質により労働時間の管理になじまず、労働者に大幅な裁量を与えた方が適切な仕事が行えるため、労使でその仕事に必要な時間を決めて、その範囲で労働者に自由な働き方をしてより良い仕事をしてもらうための制度です。
労働基準法にある労働時間の制限の例外的な制度です。
今般の改正は、働いた時間ではなく成果で賃金を支払うとしていて、対象業務や対象者の年収要件も決められるそうですが、そうなると、現在の裁量労働制とはその趣旨や考え方は随分違うのではないかと思います。
現在の裁量労働制は、1日8時間、1週40時間の大前提は認めつつ、その管理になじまないし管理しない方が業務の遂行が適切にできそうだからという理由で行われています。
「賃金を時間ではなく成果で」というのは、使用者の管理下にある時間分の賃金は支払うという今の労働基準法の大前提を最初から認めないわけで、大きな転換だと思います。
労働に対する賃金とは何か、拘束されていても賃金とはならない時間があってもいいのか、そもそも「成果」とは何か、客観的な成果を図るものさしはあるのか?という根本的なところは年収、仕事内容には関係なく検討されるべきものなのではないかと思います。

能力のある人がさくさく仕事を終わらせた場合は残業代なし、能力のない人が長々仕事をしてやっと終わらせた場合は残業代が多いというのは、どうなのかなーという疑問は、私も遠い昔のOL時代に感じていました。
しかし、その疑問に対してある上司は「会社というのは、能力のない人も引き受ける社会的責任がある。能力のある人間はない人間を助けるしかない」と言いました。その後の長い人生を歩いてきた果てに、その上司の言わんとすることが少しは理解できるようになりました。
いずれにしても、そういう根本的な議論もせず、安易に導入することには疑問を感じます。

[残業代の計算に関する参考文献]「労働時間管理完全実務ハンドブック」 森紀男 岩崎仁哉 日本法令

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