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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

残業代0になったとしたらどうなる?

働いた時間ではなく、成果で賃金を支払うために残業代という概念がなくなる働き方を認める法律案が通常国会に提出されるようです。
該当者の線引きとして年収1,075万円という数字が出ています。随分半端だなと思われるかもしれませんが、この数字はすでに労働基準法第14条関連の厚生労働省告示により出されています。
14条とは労働契約の期間を定めるための条文です。
期間を定めない労働契約は、使用者側は解雇、労働者側は自己都合退職という形で労使双方から解約の申し出がいつでもできます。
しかし、期間の定めがある場合、「期間」という縛りのために期間中はよほどやむを得ない理由がないと解約はできません。
ですから、あまり長い期間の設定は労働者側を拘束することになるので好ましくないという考え方から、原則3年、高度な専門知識などをもつ専門職(医師、弁護士、一級建築士、公認会計士、税理士、弁理士、社労士、薬剤師等)の他、年収が1,075万円以上の様々な専門的知識を要する人については5年となっています。

年収1,075万円としたのは、専門的知見や技術が必要とする仕事に雇われている労働者ということを想定しているのでしょう。医師や弁護士等については、年収制限はありません。
この条文は、「期間」の縛りから労働者を守るための条文ですが、ここにある年収1,075万円あたりが、労働者の中でも特別の能力があり会社との交渉力も一応あるだろうと考えているのかもしれません。

さて、実際にこの法案が通ると経営者は要件にあった労働者については、「時間より成果で賃金を支払う」という契約にシフトしたいと考えるでしょう。何時間働いたとしても、残業代を1円も支払わなくてよいのですから、こんなに経営者にとってうれしいことはないですよね。
しかも、「成果」について法律的な縛りは多分何もない。経営者の裁量で決められるのです。
「成果がない」と判断すれば、賃金すら1075万円ぎりぎりに止めておくことができるかもしれない。
労働者側に選択権はあるということですが、実際に選択を迫られたときに、「今までどおり時間で払ってください」と言える労働者っているでしょうか。そんなことを言うと閑職に追いやられたり、退職勧奨されるかもしれない。それでなくても出世の芽はなくなるでしょうし、多くの労働者は、能力があり自分が成果を上げられると自信満々の人を除き、渋々そういう契約をせざるを得ないでしょう。
契約とは本来互いの自由意思に基づき行われなければならないのに、心ならずも契約をする人たちがたくさん出てくることになるのでしょう。

良い面は何かあるかと考えてみると、労働者側も「何時間働いても残業代0なら、さっさと仕事をしてなるべく短時間で成果を出そう」と効率よく仕事をすることを考え、だらだら残業はなくなる可能性もあります。しかし、「成果」というものを客観的に図るものさしがないと、どこまでやれば「成果」が出たことになるのかわからず、「成果」を求めてどんどん働いてしまう可能性もあります。
経営者側も過大な成果基準を押し付けてくる可能性もあります。
いろいろなところで言われていますが、「成果」を図るのは難しいのです。前任者が種をまいたところにきた後任者が成果を上げたように見えるとか、前任者が無能だったためにごく普通の能力の後任者がえらく優秀に見えるとか、評価者も人間ですから感情的なものが作用する場合もあります。結局、絶対的なものというより相対的になってしまうことが多く、職場の雰囲気もぎすぎすしてしまうと成果主義をやめる会社の話もきかれます。
この社会を多様な人の多様な能力を認めて共生していくものとするのか、弱肉強食、人とのつきあいなどでもうまく立ち回るようなこずるい能力も含めて「能力」のある人が得をする社会にするのか、そんなことも考えさせられる法案なような気がしています。

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