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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

社内飲み会も業務と認める地裁判決

先月の話でちょっと古いのですが、社内の飲み会が終わり帰宅途中で転倒して死亡した男性の労災を認める判決がありました。(報道記事参照)


建設会社の管理職だった男性の妻が、労災として認めなかった管轄労働基準監督署の処分取り消しを求めていたものです。


記事によると、男性は、1999年12月、勤務先2階で開かれた会議の後、午後5時頃から6階で開かれた飲み会に出席して、缶ビール3本、紙コップ半分ほどのウィスキー3杯を飲みました。午後10時15分頃退社して、その10分後に地下鉄駅入り口の階段で転落して、病院に運ばれましたが死亡しました。

労災保険(労働者災害補償保険)は、人を雇った事業主には公務員、個人経営の小規模な農業、漁業などほんの一部の例外を除いて、加入義務があります。保険料は全額事業主負担ですが、料率は労働者に支払った賃金の1000分の4.5から118まで、業種によって違います。危険度の高い事業は高くなっています。ちなみに118は水力発電施設、ずい道などの新設工事です。


事業主には業務上の疾病などを補償する義務がありますので、保険をかけていざという時に備えるわけです。対象労働者は適用事業主に雇われて賃金をもらっている全ての人(業務執行権のある取締役は除く)です。アルバイト等も含まれます。


労災保険では、業務上の疾病等の他、通勤途中の事故についても業務上の事故や病気とほぼ同じ補償が得られます。ここでいう「通勤」とは就業に関し合理的な経路及び方法により往復することを言います。通勤経路を一度はずれてしまうと、原則としては元にもどっても通勤とは認めません。例外として日常生活上やむを得ないもののための逸脱、中断(注1)は、通常の経路にもどれば、逸脱、中断中を除いて通勤と認められます。


注1 ①日用品の購入その他これに準ずる行為 ②職業訓練校や大学等の学校で授業を受ける ③選挙権の行使その他これに準ずる行為 ④病院、又は診療所に寄る


記事だけの情報なので詳細はわからないのですが、いつもの経路を通って会社から帰る途中の事故なのに、何故労働基準監督署は通勤災害とは認めなかったのでしょうか。


「社内の飲み会」を業務とはとらえず、単なる懇親会ととらえたからだと思われます。通勤とは「就業に関し」という定義ですから、業務終了後に社内で行われるサークル活動や労組の会合などが長時間にわたる場合は、業務が終了して帰宅との直接的関連性がないと判断されます。


この事例の場合、飲み会開始から帰路につくまで5時間余り経過していますから、「業務終了後の帰宅=通勤」ではなく「社内の懇親会=業務とは無関係」からの帰宅と判断されたのでしょう。


裁判所は「飲み会とは言っても部下から意見や要望を聞く場で、出席は職務。飲酒は多量ではなく酔いが事故原因とも言えない。降雨の影響で足元も滑りやすかった」と判断したとのことです。即ち、この飲み会を業務の一環としてとらえ、出席も任意ではなくむしろ義務だったととらえたのかもしれません。


労働者が死亡した場合、生計維持されていた妻には労働者の平均賃金(事故以前の3ヶ月間の賞与や臨時のもの以外の賃金を3ヶ月間の暦日数で割る)の153日分の遺族年金が支給されますから、かなりしっかりした補償です。その他に労働者の子や父母、祖父母、兄弟姉妹なども年齢等の要件にかなえば権利がありますので、それらの遺族と生計を同じくしていれば、さらに給付額は増えます。1000日分を限度として前払い一時金の制度もあります。


ですから、裁判で争ってでも労災を認めてもらうのと、そうでないのとではかなり状況が違ってしまうのです。労災保険の概略は以前に当ブログでも書きました。興味がある方はご覧ください。(過去記事参照)

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