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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

「自己保健義務」を考える

開業当時、就業規則を専門にやっていきたいと思い作成のノウハウなど記述した本を随分購入し読みました。中に「自己保健義務」という耳慣れない言葉が書いてあるものがありましたが、内容は自分として納得したので、私が作成する就業規則には必ず条文として入れています。
所属する研究会にこれに関連する原稿を出したのですが、これについて知らない会員もいてちょっと意外でした。それについては、過去記事にも書きました。(参照)
昨日は、日ごろから懇意にしているある会員から「自己保健義務」というのは労働法の専門家の本には見当たらず、まだオーソライズされていないのではないかというメールをいただき、自説を返信したら電話がかかってきて、ひとしきりお話ししたりしました。
確かに、私が「バイブル」的に何かあるとすぐ開く菅野和夫氏の「労働法」(第十版)には、「自己保健義務」について掲載されていません。
しかし、厚生労働省のサイトにも明確に記載されていて(
参照)、労務管理上は「常識」となりつつあるのかなという気がします。
企業側の弁護士さんの書籍には書かれていますし、判例もいくつか出ています。

これと対するのが使用者の「安全配慮義務」であり、使用者には労働者を働かせるにあたり、労働災害を防止するために建物その他作業についての安全に配慮する、かつ過重労働の防止、セクハラ、パワハラなどの人的環境にも目配りすることなどが求められています。
労働安全衛生法や労働契約法で法律的根拠を求めることができますが、そもそも労働契約に付随する義務であると考えられています。
労働者を働かせて利益を得るわけですから、環境を整えて働かせるのが当たり前ということだと思います。
一方、労働者側には何もないのかというと、労働安全衛生法では、使用者が行う安全対策等について必要な事項を守ることや(第26条)、健康診断の受診義務(第66条第5項)を定めています。
それらを根拠として「自己保健義務」という概念が確立しつつあるのかなと思います。
労働者は、労務提供に支障がないように自分の健康に配慮したり、業務を安全に行えるように事業者に協力していかなければならないということです。

近年、使用者の安全配慮義務を問う裁判が増えて、その抗弁としてこれが使われる場合があり、実際に損害賠償額が減額されたりしています。(システムコンサルタント事件東京地判平10.3.19、東京高判平11.7.28 労判736-54)
企業側の安全配慮義務は当たり前として労働者も自分の健康に配慮して、健康診断等で異常があったら必要な措置を行うなどやってくださいねということですが、これをきちんと契約内容とするためには、やはり就業規則に規定をおくのがよいと私は思います。
就業規則に書いてあれば、規則違反も問うことができますし、冒頭で書いたようにまだ労働法学者の間で完璧に確立されているとは言い難いからです。
労働法は、弱い立場の労働者を守るために使用者に様々な義務を課している法律なので、弱い立場の労働者にあまり過度な義務を負わせるのは法の趣旨に外れるということがあるのかもしれません。
会社としては、前述でご紹介した厚労省のサイトにもあるように「業務に支障がでているか否か」をポイントとして、健康診断の結果の医師の判断などを参考に、ケースバイケースで対応していくことになると思います。

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