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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

育児休業給付を受給後復帰しない

 妊娠、出産しても働き続ける人が増えて、雇用保険の育児休業給付も随分充実してきました。
休業中の賃金が無給または、80%未満に低下した場合に支給されます。
育児休業開始日前2年間に12箇月以上の被保険者期間(賃金支払い基礎日数が11日以上ある月)があるなどの一定の要件がありますが、無給の場合、1日につき、休業直前6箇月の賃金総額を180で除した賃金日額の67%(上限額、下限額あり、180日間過ぎると50%)が支給されます。有給の場合は、給付金と賃金の合計が80%になるように調整されます。育児休業を取得する方は受給されているのではないかと思います。
受給の前提条件として、休業終了後に職場復帰するというものがあります。
休業取得時に職場復帰の予定がなく退職することが確定している場合には、支給の対象とはなりません。
育児休業給付は、法律上「雇用継続給付」として位置付けられます。
これは、育児休業を取得する労働者がいる場合、労使ともに雇用の継続を容易にするための給付と考えられます。ですから、育児休業を取得した人がすべて対象となるわけではなく、職場復帰を最初から予定していない人は対象とはならないのです。
休業途中でも離職が決定したらその時点で支給対象から外れると考えるべきでしょう。


 しかし、「もらえるものはもらってから退職しなきゃ損」と考える労働者もいるらしく、復帰する意思がなかったのに復帰するとして、1年間休業、保育園に入れないとしてさらに6箇月延長して給付を受給した末に退職したという事例を、所属する社労士会の研究会で原稿にした会員がいます。
原稿の話はさらにもっと複雑なのですが、それは置いといて、以前にもそんな事例をちらほら周りの社労士に聞いたことがあったので、そういうのが日常的に行われているんだろうかとネットで検索してみました。
すると、結構あるんですね。
①「復帰するつもりで休業して給付も受けているが、休んでいる間に復帰してやっていく自信がなくなり、子どももかわいくて離れがたいので、退職しようかと思うのですが、受給した分は返さないといけないのでしょうか?」
などという質問や
②「以前勤めていた会社で、復帰を前提に人事体制などを決めていたのに、1年後にいきなり退職を申し出た人がいて、会社は怒って以後妊娠したら退職させられることになった」
などの書き込みがありました。

①の「受給した分を返す」ということに関しては、実務的にはそういう話は聞いたことがありませんが、法律上「失業等給付」(育児休業給付金もこの中に含まれる)について、「偽りその他不正の行為により」支給を受けた場合は、政府は全部又は一部の返還を求めることができ、受給した額の2倍に相当する額以下の金額の納付を命ずることができる(俗にいう3倍返し)とはなっています。
それについて、事業主等が偽りの届出や報告、証明をした場合には労働者と連帯して返還命令に従うという規定もあります。
そこまで命令するためにはきちんと根拠を示さなければできないでしょうから、労働者が最初は復帰する意思があった、例えなくても「あった」と言い張れば本人の内心の問題ですから、嘘を証明することは難しく、結局不正受給とすることはできないだろうと思います。
かくして、不正受給もどきの復帰する意思がないのに給付だけ受けるという事例が出てくるのでしょう。

②のように人事体制がめちゃくちゃとなり激怒するという場合も出てくるでしょう。ただし、「妊娠したら退職させられる」これは明確な違法行為となります。
では、企業としてできる手立てはあるでしょうか。
育児休業を申し出たときに復帰の意思確認をきちんとするということと、あまり立ち入ったこともできませんが、復帰後の育児計画、保育園に預けるのか身内で面倒を見てくれる人がいるのかなどの確認はしてもよいのではないでしょうか。もちろん、なんらかの文書を作成します。
保育園だけが頼りとなると、入れなかったときはどうするつもりか、無認可に預けてでも働き続けるのかということまで確認したいところですが、下手をするとマタニティハラスメントとなる可能性もあり、なかなか難しいところです。
育児休業給付は復帰が前提の給付なので、気持ちが変わり復帰しない決意をした場合には受け取れない、そのときには会社にきちんと気持ちを伝えてほしいということをアナウンスすることは必要だと思います。
休業中に、子連れでもよいから会社に定期的に来てもらい、面談するということも有効ではないかと思います。

雇用保険はそれぞれの給付の目的があります。
育児休業給付は育児休業を取得しやすくするための制度です。事業主に労働者を雇い続けてもらうための給付であり、労働者が継続して働き続けることが前提の給付です。財源は、加入しているすべての労働者と事業主が支払った保険料と国庫負担です。
ほんの一部の人が本来の目的を逸脱してあたかも個人的権利であるかのように考えて、給付を受けることは間違っています。
女性が働きにくくなるなどの弊害もでてくるし、面倒な手続きをしてくれている企業関係者にも迷惑がかかるということを、社労士としてもアピールすることが必要なのかなと思いました。

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