FC2ブログ

おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

憲法における私人間効力

昨日久し振りに憲法の本を読んでいて、社労士試験の過去問でも出たことのある「三菱樹脂事件」(最高裁大法廷判決昭和48.12.12)にぶつかりました。


社労士試験では、事業主の採用の自由についての判例として出たのですが、もともとは憲法に保障される基本的人権が、大企業対個人という場面でも適用できるかが争われたものです。


昨日もちょっと書きましたが、憲法にある基本的人権の尊重は国家対国民を規律するものです。国家権力から個人を解放するための規定なのです。しかし、国民対国民であっても相手が巨大企業のように大きな力を持つ場合は憲法が類推適用されるのではないか、という問題提起されたのが三菱樹脂事件です。

原告X氏は大学卒業後三菱樹脂株式会社に三ヶ月の試用期間を設けて採用されます。しかし、入社試験の身上書や面接で学生運動や生協理事としての活動を隠して虚偽の申告をしたとして、試用期間満了の直前に本採用を拒否されます。X氏は労働契約関係存在の確認を求めて提訴します。


一審、二審ともX氏の勝訴となります。


①憲法19条にある思想、信条の自由は私人間であっても一方が他方に優越する地位にある場合には、みだりに侵してはならない、②新聞社や学校と違い、商事会社では労働者の思想・信条が業務に支障をきたすとは考えられない、③採用試験で政治的思想、信条に関係する事項の申告を求めるのは公序良俗に反する


等が判決理由です。


三菱樹脂側が上告して、破棄差し戻しとなったのがこの判例です。


判決では憲法19条、14条について「国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出た」として、私人相互の関係について直接規律するものではないとしました。他方が一方より社会的な力関係が優越するとしても、その態様、程度が様々であり立法措置により是正が可能であるとしました。


その上で憲法は22条、29条において財産権の行使、経済活動の自由などを保障しているため「企業者は、かような経済活の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて・・・・・原則として自由にこれを決定できる」というおなじみの文章につながってくるのです。


この判例により使用者には採用の自由があるとされるようになりましたが、その後男女雇用機会均等法、個人情報保護の観点から制限が加えられる傾向にあります。職業安定法5条の4では、業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者の個人情報を収集するように規定しています。


そのため、現在では、採用の面接で業務に関係のない家族や実家の資産などについての質問とともに、思想信条に関する質問もやめるようにと労働局などでは指導しています。特に大阪労働局のHPはとても具体的に書いてあります。採用面接の想定問答でもさすが「ぼけ」と「つっこみ」が日常会話で成立すると言われる土地柄だけあって、思わず笑ってしまいます。(参照)


なんだか話が脱線してしまいましたが、三菱樹脂事件の頃も学説では思想・信条による採用拒否は公序違反とする説が多数説でしたから、その方向へ進んだということになるでしょう。

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する