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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

夫婦同姓は憲法違反か?(1)

企業実務1月号今月発売となった日本実業出版社の『企業実務』2017年1月号に、「どう考える?ビジネスでの旧姓使用」と題する原稿を書かせていただきました。
結婚・出産後も働く女性が増えて、結婚により改姓しても旧姓のまま働くことを希望する女性が増えています。
離婚、養子縁組などでも姓が変わりますが、業績や評価など別人とされて不利益となる場合もあり、国家公務員の場合は、国立大学の女性教員が提起した裁判をきっかけとして、2001年10月より職場で通称として旧姓を使用することが認められています。
大企業を中心に認める会社も増えていて、職場での旧姓使用の拡大が見られるため、それについての社会的流れ、法律的背景、及び行う場合の労務管理等について書かせていただきました。
誌面スペースの関係で関連する裁判について、書けなかった判例があるので、当ブログで書いておこうと思います。

 2015年12月16日の最高裁判所大法廷判決です。
夫婦で同一の姓を名乗ることを規定した民法750条(注)が個人の尊厳、両性の平等などを定める憲法違反になるかが争点となりました。
結果的には合憲とされたのですが、裁判官15人のうち女性裁判官全員(3人)を含む5人が民法750条は憲法違反であるとする補足意見を出しています。
この判例が何故「職場での旧姓使用を通称として認めるか」に関係があるのかと言いますと、この判決文の中で、「夫婦同氏姓は、婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではなく、近時、婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっているところ」として、裁判を訴える契機となった妻側が受ける不利益が「一定程度緩和される」としているところです。
通称使用の社会的流れを認め、肯定的にとらえているかのように読めます。
(注)民法750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する


さて、事件をもう少し詳しく見てみましょう。
上告人(訴えている人)は、結婚して妻が夫の姓に改姓した後通称として旧姓を使用している夫婦や協議離婚した後再度氏を選択せず婚姻届を提出(氏が選択されていないため不受理)した夫婦など、複数の人たちです。
前述の民法750条では夫の姓でも妻の姓でもよいとしていますが、現実には、家制度の名残など社会的慣習、夫やその親族への気遣いなどから96%の夫婦が夫の姓を選択しています。(厚生労働省人口動態調査2014年)
これは、憲法13条(個人の尊厳、幸福追求権)、憲法14条1項(法のもとの平等)、憲法24条1項、2項(家庭生活における個人の尊厳と両性の平等)に違反する、そのためこの規定について改廃する立法措置をとらない国について国家賠償法による損害賠償を求めたものです。

では、姓が変わることによりどういう不利益があるでしょうか。これは経験者ならおわかりと思いますが、1.アイデンティティの喪失感、2.別人と認識されるおそれ、3.プライバシーの侵害、4、事務的な手続き等の負担、などが挙げられます。
1.については、個人差が大きいと思いますが、生まれたときからなじんだ姓が変わることに対して人格までもが変わってしまうような気持ちになる人もいます。
2.については、長く働き続ける女性が増えていますので、業績、評価などで同一人と認識されないと困ります。論文なども連続性が失われるおそれもあります。
3.については、結婚(ときには離婚、養子縁組)などプライバシーに関することが職場等で知られてしまうことに抵抗のある人もいます。1.2.3.については、個人で感じ方が異なると思いますが、4.は多くの人が面倒さを感じるのではないでしょうか。
そのような不利益を、社会的慣習等による目に見えない圧力などのために多くの女性が引き受け、負担している現状はおかしい、民法750条の夫婦の姓を同一とする規定がなければ、そのようなことにはならないというのが訴えた理由です。
長くなりましたので、続きはまた明日書きたいと思います。

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