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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

「好きで仕事をやっている人」の長時間労働?

 年末に電通社長が引責辞任することを発表し、長時間労働の抑制について社会的な関心が高まっています。というより、国が主導して高まらせている感がありますが、それはそれでよいことだと思っていました。
したところ、それに先だち、労働基準監督署から是正勧告を受けた芸能プロダクションや音楽関連事業を行う会社の創業社長が、自身のブログで勧告には真摯に対応するとしながら、労働基準法は自分たちの業界の常識には合っていないし、古い時代の法律で自分たちの事情もわからず取り締まっていて、是正勧告を受けたとたんにブラック企業扱いなのは納得できない、というようなことを書いていると、ネットのニュースで読みました。
年末のあわただしい時期だったので、そのままにしていましたが、今日、あらためてその全文を読んでみました。
「好きで働いている人」、「好きで仕事をやっている人」というような表現が何度もでてきます。
「僕らの仕事は自己実現や社会貢献みたいな目標を持って好きで働いている人が多い」とも書いています。
全体の論調は好きで働いているんだから、法律で決められた労働時間など邪魔ですというふうにとれます。

 労働基準監督署の是正勧告の内容は書かれていませんが、文面から推察すると違法な長時間労働をさせていて、残業代未払いもあったようです。
現在、原則「1日8時間、1週40時間」という労働時間の法律的な枠はありますが、業務の実態に合わせて変形労働時間制、専門業務型みなし裁量労働時間制なども法律の枠内にあり、それらを使うと多少は弾力的な労働時間とすることができます。
また、労使協定を締結して労働基準監督署に届け出れば、「1日8時間、1週40時間」という枠を外すこともできます。特別の事情により業務が増大した場合には「特別条項付の協定書を別途届出れば、法的には何時間でも残業することが可能になります。もちろんその分の割増賃金の支払いは必要ですが。
ですから、法律の枠内の手続きを踏んで長時間労働をさせることは可能です。当然ですが、私としてはそんなことを企業に勧めるつもりは毛頭ありませんし、あまりにも長時間になれば、当然労働基準監督署の指導を受けるでしょうが、全く労働時間の枠を外せないというわけではありません。
この社長はそのあたりの知識はあるのかなとちょっと疑問に思いました。

労働基準法を古い法律で現状や個別の業界の事情に合わないとしていますが、そもそも法律というのは一つの基準を国として設けて、様々な利害関係人の調整をするためにあるのですから、個別の事情などには配慮することはできません。個別の事情については、法律を遵守した上で個別の契約関係の中で調整することになります。
特に、労働基準法は労使関係という対等な契約関係でありながら、労働者側が弱者となってしまいがちな特殊な契約関係に配慮して作られた労働条件の最低基準です。
人を雇用するということは、人と契約を結ぶということですが、二者の関係性に優劣があり一方が命令できる立場にある場合、命令される他方の合意がなければ契約は成立しません。
使用者の暴力的な支配から労働者を守るために作られた最低基準が労働基準法です。
労働基準法は昭和22年制定ですから、確かに古い法律ですが、何度も改正されていて平成27年までの間に10回の改正が行われています。
大きな流れとしては、長時間労働を抑制する方向にベクトルが向いているような改正だと思います。
このあたりも経営者としては認識しておいていただきたい点です。

さて、この社長のこのブログ記事を読んで私が感じたことは、「電通と同じ匂い」です。
会社内にすぐ利用できる病院を作ったり、定期的にメンタルチェックなどもして労働環境に配慮している、そして、前述の自己実現や社会貢献という目標を持ち好きで仕事をしている人が多いというような部分です。
「電通事件」の裁判でもホテルと契約してすぐ泊まれるようにしているとか、病院との契約など福利厚生にも力を入れている、クリエイティブな仕事に労働時間の規制はなじまないなどと、会社側は抗弁していました。
「社会貢献や自己実現」を目指して「好きで仕事をしている」も何となく似ているなと思います。
社長がそう思っているのはわかりましたが、この会社の従業員の人は本当に仕事が好きで長時間労働大歓迎なのだろうか。疑問が残るところです。

政府が長時間労働抑制に舵を切ったのも、人口減少社会になっていくこれから、働ける人には働いてもらいたいからだと思います。それをするためには昭和の時代のように「滅私奉公」とか、長時間労働ができない人を職場から締め出していては立ち行かないからだと思います。
短時間でも良い条件で働くことができて、すべての人が能力を発揮できるようにしていくのも、ひとつの社会貢献であることを経営者は意識するべきだと思います。
この国で商売して儲けているのですから、この国の法律守らないのはフェアじゃないと私は思います。だって、しっかり法令遵守している会社もたくさんあるはずですから。
法律が実態に合わない、法律がおかしいと思うのであれば、選挙で自分の意思を示す、ロビー活動などにより政治家を動かす、そんなことが必要かな、表だって労働基準法を否定するなどの本音を発信するのは、「トランプ現象」と似てるのかななどと、新春早々いろいろと考えさせていただきました。


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