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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

採用面接で精神病(歴)を申告させるのは許されるか?

昨日書いた採用面接での精神病(歴)についての申告を求めることについて、私はどちらかというと反対の立場です。


「三菱樹脂事件」(過去記事参照)以来「企業には法律の制限がない限り誰を採用するか原則として自由に決定できる」という最高裁判決が、企業の採用の自由を認める大きな根拠となっています。


もう一度「三菱樹脂事件」を見直してみようと思い、昨日久し振りに東洋大学の図書館に行ってきました。

大学の図書館では、『ジュリスト』や『法学セミナー』などの法律雑誌が創刊以来のバックナンバーが全てあり、もちろん最高裁の判例集なども開架で自由に見ることができます。


当時のそれらの雑誌には、かなり大きく特集が組まれ話題になった判例だということがよくわかります。一審、二審では思想・信条を理由に採用を拒否することは公序良俗に反するとしたわけですが、最高裁では全く逆の結論で、企業の採用の自由を大きく認めたような結論となっています。


しかし、当時の雑誌を見るとかなり評判の悪い判例だったことがわかります。学説では圧倒的多数で思想・信条を理由に採用を拒否することを否定します。思想・信条は労働能力とは直接関係ない、採用拒否は労働者から労働の機会を奪うものである、などが理由です。


労働者が労働力を売って生活の糧を得る以上、まずは労働の場を得なければならないのに、人格の中枢をなす思想・信条を理由に採用を拒否されては、生存権が脅かされることになりかねない、というものです。


最高裁判決では、いったん私人間の憲法効力(19条思想・信条の自由)を否定しながら、憲法22条、29条に基き企業の自由を認めている、なのに、労働者の生存権については価値判断に載せていない、非常に企業よりの判決だと、批判されています。


30年以上がたち、現在では採用にあたり思想・信条など直接業務と関係のないことは聞かないというのが常識になりつつあり、当時の学説の流れになったというのは、過去記事のとおりです。


さて、そんな古い時代のかつ批判の多かった判例でも、最高裁判例となると様々な局面で根拠とされてしまうのだから、判例恐るべしです。


それはそれとして、法律に規定がないし採用の自由があるのだから、企業は採用に際してその人がどちらかというとあまり人に知られたくないようなことまで聞いてもいいのだろうか。という問題が今回の標題です。


企業は、自己の利潤を追求するために自己の利益となる人材が欲しいというのは当然でしょう。しかし、企業も社会の構成員ですから、社会の一員としての良識を持つこともまた当然ではないでしょうか。そうだとしたら、採用面接で相手が不快に思ったり傷つくような質問は控えるべきではないでしょうか。だいたい真実を申告してくれるかどうかもわかりません。しかも、そういう質問について敏感な人は相当反感を持つことも予想されます。


求職者も将来の顧客になる可能性があることを考えても、あまり快く思われない質問は避けるべきではないでしょうか。


再三書いているように、目の前にいるその人をよく見るというのが基本だと思います。ただ、入社後に問題があった時に対処するためのシステムはきちんと作っておく必要があると思います。休職期間を入社期間に応じて1~6ヶ月ぐらいにするとか、休職期間満了後は退職にする等です。


と、いろいろ考えてみましたが、企業の立場に立ってしまうとまた違った結論となるのでしょう。こういう問題に限らず、企業といっても人の集団ですから、この社会での倫理観や道徳観に反することはしないと考えれば、結論は出しやすくなるのではないでしょうか。

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