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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

退職の申出と就業規則について考える

 先週、所属する社労士会の自主研究会で、退職する従業員が引継ぎをしないで辞めてしまう事例についての原稿が提出され、いつものように経験談などを踏まえていろいろと意見が出されました。
就業規則には「自己都合退職する場合には引継ぎを必ずしなければならない」「しない場合は懲戒処分もあり得る」などと記載するのが普通だと思います。
しかし、従業員側が有給休暇を消化するために休んでしまい、引継ぎが不十分になる場合もままあるケースです。
有給休暇は原則としていつ取得しようと労働者の自由ですし、退職する場合には業務に支障をきたす場合に使える「別の日にしてもらいたい」という会社側の権利も使えません。
最も望ましいのは、情報を共有化して、急に誰かが辞めたり休んだりしても困らないシステムを作っておくことで、原稿の結論もそこに至っています。
その中で、退職を申し出るのが3か月とか1か月とか書いてある就業規則について、「違法ではない」という話がでました。

 原稿作成者は、もちろん民法627条についても記載していますが、就業規則に3か月は長いとしても1か月前に申し出ることと記載するのは違法とはならないとしていました。
労働基準法では、労働契約の解除についての条文として使用者側に30日前までの解雇予告を課していますが、労働者側には特に定めがありません。したがって、民法627条の「期間の定めのない雇用の解約の申入れ」の条文が適用されることになります。
期間の定めのない労働契約はいつでも解約の申入れができるとあり、解約の申入れから2週間経過することにより終了するという条文になっています。
しかし、使用者側からの解約=解雇については、特別法である労働基準法に規定があるためそちらが優先されます。
労働者側については労働基準法に定めがないため、申入れから2週間経過後に終了することになります。ただし、月給制の場合には、月(賃金支払期間)の前半に申し出れば当月末に、後半だと翌月末に退職できるとする但し書があります。この「月給制」というのは欠勤控除などしない「完全月給制」に適用されるというのが大方の学説となっています。

ということは、いくら就業規則に退職する1か月前に申し出なさいと書いてあっても2週間経過することにより終了するのですから、本来は無効であり意味がないということになります。
しかし、書いておけば早めに申し出てもらえるであろう、その方が会社にとって都合がよいということで、長い場合には「3か月前」などとする就業規則が出てくることになり、実際、研究会の会員の中に3か月前までに申し出て辞めるまでにそのぐらいかかったという人がいました。
私の作る就業規則も、民法627条を踏まえつつ「できる限り1か月前までに申し出る」「2週間前までには必ず申し出る」として前者はなるべくそうしてほしいというニュアンスで、後者は義務として規定しています。
でも、前者については、強制はできないということを会社には説明しています。

しかし、先週、あれこれ話をしていて、書いておけば労働者側もそれを気にしてもらえるだろうというのは、ちょっとずるいことかもしれないと思いました。労働者側は民法の規定など知らない人が多いと思いますから。
現行の法律に即してやるのであれば、法的に意味のない規定など作らず、法律どおり2週間前までに申し出てほしいと書いておけばそれでよいのではないか。
労働者が退職だけではなく、特に何が起こるかわからない昨今ですから不測の事態により突然会社にいなくなることがあるかもしれません。その時にあわてないように業務上のシステムを作り上げておくことは、会社にとって重要なリスク管理です。
就業規則をこねくり回すより、そういうシステムをきちんと構築することに注力するべきでしょう。

近年の労働環境の変化により、私が社労士になった12年前には当たり前に記述していた事項も、見直すべき時期なのかもしれないと思いました。

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