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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

法令の解釈も変化する

 最近、「令和の令は法令の令」などと言っておりますが、時代とともに法令の解釈も変わります。民事的な法令というのは、価値観の違いや利害関係の違いがあることを前提に、何とか折り合いをつけて、平穏に暮らすために作られています。しかし、そこに書かれている文言ですべての問題が解決できるわけではなく、書かれていないようなことも、ケースバイケースで法令の趣旨に沿って解釈して解決しなければなりません。
一番の例は裁判になったときで、裁判の判決文にはどの法律のどの条文を適用したかが書かれていますが、条文そのままというよりその解釈が判決文の中に盛り込まれているため、この法律はこのように解釈するのだなという考え方のお手本となります。
もちろん、それだけではなく、学者の先生が様々な解釈論を展開していますから、それらも参考になります。
というわけで、私もそれらを勉強して法律の理解を深めていくわけです。
このところ、必要があって、出向に関する判例を調べていますが、判例も社会の変化に応じて少しずつ変わっているのがわかります。

 出向とは、雇用関係のある会社から子会社や関連会社に移って仕事をするようになることで、キャリア形成や雇用調整、高年齢者の処遇など様々な理由で古くから行われている人事管理の一つです。
元の会社に籍を置いたまま出向先に行く「在籍出向」と元の会社との契約を終了して出向先の会社に移籍してしまう「転籍出向」があります。
転籍の場合は、転職と同じようなもので、元の会社とは関係なくなり、出向先の会社と新しく契約関係が発生します。
「在籍出向」の場合は、出向元(A社とします)、出向先(B社とします)、労働者(Xとします)と三者間の関係ができ、Xから見た場合、A社とB社の両社と雇用関係があるという少し複雑な労使関係になります。
このような場合、XはA社から言われてB社に行き、以後A社との関係は切れていませんが、B社に行き、B社の指示命令を受けてB社の仕事をします。B社とも雇用契約を結ばないと「派遣社員」みたいになりますから、B社とも雇用契約を結ばなければなりません。

このような場合に、A社はXの同意を得ないとB社に行かせることはできないとするのが、以前の原則の考え方でした。民法625条に使用者は労働者の承諾なくその権利を第三者に譲り渡すことができないという規定があるからです。「使用者の権利」とは、労働者から労務の提供を受ける権利ですから、出向させて別の会社が労務の提供を受けるようにするためには、労働者の同意が必要ということになります。

しかし、その後、就業規則に労働者の利益にも配慮した詳細な規定があれば、同意なく出向させることができるという考え方に変わってきました(新日本製鐵事件 最判平12.11.28)。
就業規則は、労使の契約の内容ですから、契約するときに両者が合意していれば、それが契約内容になるという考え方からだと思います。労働者を保護するために、裁判では労働者の利益に配慮していることが条件となっています。
その後、労働契約法の施行により、出向させる場合の同意については明記されていませんが、出向の必要性、労働者の選定、その他の事情に照らして権利の濫用となるものは無効とするという制限が法制化されています。
権利の濫用にあたるのは、持病のある労働者の負担になる場合や協調性がないと判断された労働者を職場から追い出すような場合、わざと不適切な仕事をさせて退職させようとした場合などが裁判で認められています。

その後、会社の再編なども行われるようになり、親会社、子会社の関係で場所が同一、役員も兼務していて、実質的には使用者が同じような密接な関係のある会社への出向は、通常の人事異動と考えて、同意なくできるとした裁判例も出ていて(新潟地裁高田支部判昭和61.10.31)、出向について、社会の変化に応じて、ゆるやかにというより企業活動がしやすい方向に変わりつつあるのかなという印象があります。
何事も変化していくということなのでしょう。昭和は遠くなっていくのかなーと思うのでした。




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