FC2ブログ

おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

ある労働者の投書 法律は無力?

 今朝の朝日新聞の読者投書欄に「守られない労働者 痛感します」という見出しが目に入り、社労士としては看過できないなと拝読してみました。
投書者は札幌ドームに広告を出していて社名がテレビ画面に出る会社とのことですのでそれなりの規模の会社だと思われますが、正社員として勤務している方(40代男性)です。
ご両親の体調不良を配慮して実家近くの支店に転勤を願い出て、認められたためこの春実家近くに家を新築して、8月に引っ越しましたがすぐ出るはずの辞令が出ず、別の支店なら異動を認めるという話になり、おかしいと思い労働基準監督署、法テラス、弁護士など考えられるあらゆるところに相談しましたが、人事は会社の裁量範囲が大きいとの回答で口約束だったこともあって、仕方なく会社から言われた支店への転勤となりました。しかし、新しい自宅から車で2時間かかり、体調をくずして欠勤し退職の手続きをしているとのことです。
社会は労働者を駒としか考えていないとの投書です。

 一般的な会社の就業規則には、業務の都合により異動を命じることがあるという規定や、正当な理由がない限り社員はそれを拒めないというような規定がある場合もあり、正社員の場合、たいていは会社に言われるがままに異動せざるを得ません。
法的にも、合理的な規定で周知されている就業規則なら、それが契約の内容になるとする労働契約法の規定(第7条)があります。
また、就業規則に転勤を命じることができるとする規定があれば、個別の同意がなくても労働者の勤務場所を決定して労務の提供を求める権限があるとする最高裁判例も出ています。
その後、育児、介護休業法で育児、介護をする者について異動については配慮するようにとの規定が作られましたが(26条)、今のところ企業側の人事の裁量権を認める考え方が主流です。それについては、過去記事にも掲載しました(
参照)。

ですから、投書者があちこちで「人事の裁量は大きい」と言われたのは、現状の労働法的な考え方では、無理からぬことだったと思います。
投書者の場合は、ご両親について「体調不良」とだけあり、よくわかりませんが、育児・介護休業法が想定しているのは、かなり重篤で常時介護が必要な状態などを想定しているものと思われます。

会社に愛想をつかしたということのようですが、そんなにすぐ退職する必要があったのでしょうか。体調不良の内容がよくわかりませんが、勤務が不可能ならいったん休職して傷病手当金を受け取りつつ、会社とじわじわと交渉するやり方もあったかもしれません。
休職期間がどのぐらいかわかりませんが、半年、1年とたてば会社内の状況が変わる可能性もあるかもしれません。
もちろん、退職しても現在健康保険の傷病手当金を受け取れる状況にあるなら、退職後もそれを受給しながら体調を整え、もっと働きやすい職場に転職することもありでしょう。
その場合、ハローワークにその旨申し出て失業等給付の受給期間の延長の手続きをとっておくとよいでしょう。最大3年間延長できます。
体調がよくなってからじっくり休職活動をすればよい思います。
何とか働ける場合も失業した理由について「自己都合」ではなく、やむを得ない退職であることを申告して、「特定理由離職者」に認定してもらうと、優遇措置があります。

企業は今人材不足です。人材確保のために地域限定正社員(転居を伴う転勤がない)や短時間正社員制度を積極的に導入している会社もあります。多少、賃金が低くても社員に思いやりのある会社もあります。実際、私の関与先でも中小企業ながら、社員に思いやりがあり、様々な働きやすい制度を作っている会社もあります。
投書者の方が今後是非そういう職場に巡り合うことができることを願わずにはいられません。

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する