FC2ブログ

おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

「賃金とは何か」を読む(2)

さて、昨日の続きです。


職務給について学んだ楠田氏は、同時に職務調査、職務評価、職務グレードの作り方など客観的に仕事を評価して賃金を決める職務給について体系的に学びます。氏は賃金体系論に目覚め、最初は職務給に抵抗は感じなかったと語っています。


しかし、労働省に帰り、上司に話すと「日本では職務給はだめだ」と言われます。

その仕事に対して人を雇うアメリカ、いわば最初に仕事ありきで雇うアメリカと違い、日本は会社が人を雇うため社内で仕事が変わるということが日常的に起きます。いわば、最初に人ありきなのです。職務給(仕事給)では、社内で異動するたびに給料が上がったり下がったりという不都合な事態が起きます。


アメリカでは会社は変わるけど仕事は変わらず、日本では、仕事は変わっても会社は変わらないという圧倒的な労働マーケットの違いがあったのです。


ある仕事が厳然とありそこに人をつけるアメリカと違い、日本では仕事についた人間が仕事をクリエイトするということがよく起こり得ます。それでは、仕事給は成り立たないというわけです。そのため、比較的職務分析がしやすい鉄鋼や電力の業界では職務給を取り入れたということです。


日本では、それまでは、学歴、性別、勤続年数などでいわば、属人的なもので賃金が決められていたわけですが、アメリカ流に考えるとそういうのはおかしいということになります。仕事に対する賃金なのだから、仕事を離れて属人的なものだけで賃金を決めるのは、違うというわけです。職務給を知ってから15年もたってから、楠田氏は能力によって賃金を決める「職能給」というものに思い至るのです。


職能給とは職務遂行能力をみるというもので、その職務の分析をして必要な能力別に社内的な資格を設けて等級を分けます。そう簡単な作業ではありませんが、客観的に職務に必要な能力を見分けることができれば、公平な制度となります。賃金の3割ぐらいについては、職務給の要素も入れておけばよりわかりやすい賃金体系となります。


氏の職能資格制度は80年代から流通業を中心に支持を広げます。90年代に入り、成果主義が台頭してくると仕事(タスク)の割り振りも問題となります。成果を上げやすい仕事についている人が有利となるからです。氏は実力主義、加点主義を提唱します。実力にプラスして本人の意思と適性で仕事を与えるというものです。


また、タスクを与える時に能力よりもちょっと高めのタスクを与え、チャレンジさせるとよいとも言っています。


職能資格制度の場合、職務調査をしっかりやらないと単なる年功的賃金になってしまう可能性があるため職務調査をしっかりやれるかどうかが、成否を分けるということになります。


楠田氏は成果主義を誤った競争主義と看破しています。職場の連帯感をなくし、目先の成果を追うだけになり失敗を恐れるようになる、企業が縮小再生産に向かうとしています。「あいつも伸びろ、俺はそれ以上に伸びていく」という競争ならいいが、多くは相手に勝とうというより相手の失敗を望むようになる、相手の失敗により自分は助かるから。また、仕事を教えると自分の損になるので、仕事を教えない。これでは企業全体がよくなるわけはないですよね。


企業は人件費をけちってはいけないなど、読んでいて共感するところの多い本でした。何よりも今更ながら、職務給と職能給の違いがとてもよくわかって、大変参考になりました。

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する