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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる15年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

労基署への申告による不利益取扱は違法

 ネットのニュースサイトでみた報道ですが、ある地質調査会社に勤める社員Xさんが恒常的に長時間労働なのに残業代がわずかしか支払われず、会社に聞いても「裁量労働制だから」という理由を言われるだけで改善されません。
Xさんは何をどうしていいか全くわからず途方にくれていましたが、その後体調をくずして会社を休職しました。友人が個人でも加入できるユニオンの存在を教えてくれて、地元のユニオンに行きつきます。
そこで行動するためのステップを教えてもらい、まず、裁量労働制について調べて、会社が労使協定など適切な行為をしていないことがわかり、裁量労働制は無効だから残業代を支払ってほしいと内容証明を送付しました。
しかし、会社は制度運営に問題はないとして支払を拒否したため、会社管轄の労働基準監督署に申告しました。
すると、会社から呼び出され、「内容証明を送ってきたり、労基署に申告したりしてあなたとはもう信頼関係が築けない」
「休職期間が終わっても戻る席がない」、「退職届を出さないと、お母さんや推薦した大学の先生に話す」などと言って、退職を迫りました。

 Xさんは、ユニオンに相談して会社とのやりとりについて再び労働基準監督署に申告しました。
また、ユニオンが会社と団体交渉をしたところ、先の発言について謝罪し、残業代は支払われましたが、Xさんの記録による計算と金額には隔たりがあり、さらに交渉を継続するということです。
また、2回目の申告後に労働基準監督署からは会社に対して、「裁量労働制の手続きについて不適切であること」、「労働者の申告について不利益取扱いをしたことは違法である」として、二つの是正勧告が出されました。

以上が報道内容のあらましです。
まず、裁量労働制というのは労働時間制度の例外的措置で、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制があり、前者は具体的な業種19種類、後者は事業の運営に関する企画、立案、調査、分析などの仕事に限定されています。
どちらも業務の性質上時間配分などについて労働者の裁量に任せる必要性が高い業務のためで、1日の労働時間を固定的に決めてしまい、何時間働いても決めた時間働いたとする制度です。法定時間ぎりぎりの8時間と決めれば、残業代は0ですし、10時間と決めれば常に1日2時間分の残業代が発生するという考え方です。
本件は専門業務型裁量労働制のようなのですが、分類された業種の中に地質調査というのがどれに該当するのか私にはちょっとわかりませんでした。
とりあえず、労使協定や協定内容などが決まっていて、きちんと手続きを踏まないとできない制度です。
これらについて興味のある方は以下厚生労働省のサイトをご確認ください(
参照)

さて、随分、長い前置きとなってしまいましたが、私が書きたかったことは、労働基準監督署が労働者の申告に対する不利益取扱いについて是正勧告を出したというところです。
私の不勉強かもしれませんが、今まで、あまり聞いたことがありませんでした。
労働基準法により、労働者は労働基準法違反があると思った場合、労働基準監督署に申告することができます(104条)。それについて、使用者は申告したことに対して不利益取扱いをしてはならないと規定されています(同条第2項)

本件の会社は、「労基署に申告したりして信頼関係が築けないから退職しなさい」と迫っています。さらに「親や大学の先生にも言う」などと労働者に心理的圧迫を加えてパワハラまがいの発言もしています。
明確な「申告したことによる不利益取扱い」とされても仕方がないでしょう。
是正勧告はあくまでも勧告であり、法的拘束力はありませんが、行政に指導されているわけですから、直すべきところは直して報告書を出さないと、悪質とみなされるおそれがありますから、改善策を講じてそれを報告するのが普通です。
この会社がその後どうしたか報道にはありませんが、ニュースの中で労働問題に詳しい弁護士さんの話があり、興味深かったので、明日続きを書きたいと思います。

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