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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる16年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

派遣労働者を守る条文

 関与先からの相談で、派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)を読む機会がありました。
相談内容はいろいろ複雑なこともあり、面白い話ではありますが、関与先から相談されたことをそのままブログに書くのは控えたいので、以下一般的な事例として内容を大幅に変えてちょっと書いておきたいと思います。
派遣社員Xさんは派遣先のA社に6か月の契約で派遣されています。
業務内容は技術系の正社員の補助という内容ですが、Xさんもそれなりのスキルのある人です。
契約期間も残り1か月となり、派遣元人材派遣会社にさらに6か月の契約を更新するか否か連絡する時期がきました。
A社はXさんの働きぶりがやスキルのある人材であることを見込み、派遣契約終了後に正社員として採用したいと考えてXさんに打診したところ、XさんもA社の労働環境に好感をもっていて、派遣元との契約期間もいったん同時期に終了するので、A社に採用してほしいが、派遣元との契約で、派遣元との契約が終了後1年間は派遣先との雇用契約をすることができないことになっていると言います。
Xさんは1年間待たないとA社に入社できないのでしょうか。
いいえ、できます。

 派遣法33条1項では、派遣元は、正当な理由なく派遣元と派遣労働者の雇用契約終了後に派遣先に雇用されることを禁じる旨の契約をしてはならないとしています。
要するに、「1年間派遣先に就職してはいけない」というのは派遣法違反ですから、契約内容は無効ということになります。
また、同条第2項では、派遣元が派遣先に対して同様な契約をすることも禁じています。

この条文の一つ目のポイントは、派遣元との雇用契約が終了後でないと派遣先には就職できないということです。
前述の事例では、派遣元との契約が終了するのも派遣期間の終了と同時期なので、Xさんは派遣元との雇用契約終了後にA社に就職が可能となります。
しかし、もし、派遣元との契約期間が残っていると契約期間終了後に可能ということになります。
Xさんが派遣元と「期間の定めのない契約」をしていたとしたらどうでしょうか。
その場合はもっと話が簡単です。
期間の定めがない雇用契約については、労働者はいつでも自分の都合に合わせて解約(退職すること)の申し入れができます。
申し入れ後2週間経過後に雇用契約は終了するという民法の規定があります(627条1項)。
したがって、派遣元は、Xさんの退職、その後の就職について何かを言う権限は何もありません。
そもそも、職業選択の自由は憲法22条で保障されていますので、法律もそれに合わせて作られています。

前述の派遣法33条のもう一つのポイントとして「正当な理由なく」とする文言があります。
「正当な理由」があれば派遣元は派遣労働者の派遣先への就職について文句を言えるのかというところですが、これについては、厚生労働省が「労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和5年4月1日以降)を出しています。
結論から言いますと、「正当な理由が存在すると認められる場合は非常に少ないと解される」と同要領に記載があり、ほぼそういう理由はないだろうと考えられます。
要領では、労働者が習得した知識、技術、経験が普遍的なものではなく、特殊なもので他の使用者のもとでは習得できないようなその使用者の財産となるようなもので保護されるべきものなどとしています。
そもそも、その派遣元だけが持っているような技術や知識を持つ労働者を派遣社員として必要とする会社はあるのかという疑問もでてきますが、それは置いといて、「正当な理由」というところはあまり気にしないでいいようです。

というわけで、派遣先はいいと思った派遣社員について、派遣元との雇用契約終了後には、
遠慮なくどんどん自社の社員として雇用契約を結ぶことができますというお話でした。
当地は本日も朝から暑いです。
皆様のご健勝をお祈りします。





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